「ハロウィン」に存在した“恐怖のバロメーター” ジェイミー・リー・カーティスが明かす撮影秘話

2022年10月31日 11:00


ジェイミー・リー・カーティス
ジェイミー・リー・カーティス

1978年、ジョン・カーペンター監督によるホラー映画の金字塔「ハロウィン(1978)」が誕生。同作の40年後を描いた「ハロウィン」「ハロウィン KILLS」を経て、最終章「ハロウィン THE END」が製作された。同シリーズで主演を務めてきたジェイミー・リー・カーティスが、ニューヨーク・コミコンで行われたパネルトークに登壇。貴重な撮影秘話を語ってくれた。(取材・文/細木信宏 Nobuhiro Hosoki)

ハロウィン(1978)」製作当時、カーティスは19歳で主人公ローリーを演じている。「その時の私にとって、ローリーは単なる役柄。当時の私には似ていなかったし、同じような服も着ていない。考え方さえも異なっていました。ローリーは、クラスを首席で卒業するような生徒。私自身は、なんとか高校を卒業できたという感じだったんです」となかなか共感できるキャラクターではなかったそうだ。

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カーティスにとって「ハロウィン(1978)」は、記念すべき初主演作。「あの映画によって“真の俳優”になる機会を与えられた」という。

「撮影は17日間。おそらくこの映画のワールドツアーをしていた期間の方が、撮影の2倍になると思います。今のシリーズの宣伝費は、『ハロウィン(1978)』の製作費の25倍、あるいは30倍はかけていると思う。その他に覚えているのは、アメリカのロックバンド、スティーリー・ダンの楽曲『Hey, Nineteen』がヒットしていて、その曲を撮影クルーのメンバーが『これは君の曲だね』と言ってくれたことを覚えている。だから、あの楽曲は私のために書かれた曲だと、勝手に思っているんです(笑)」

ローリーを演じる際は、アドレナリンがあふれ、呼吸が乱れる。叫び声をあげ、恐怖を感じなければならない。どのようにして、そのレベルの演技を維持にしているのだろう。

「大抵の映画では、時間経過通りにシークエンスを撮影することはありません。特に予算のない映画は、順撮りすることはできません。『ハロウィン(1978)』では、1~10の“恐怖のバロメーター”を決めていました。そのバロメーターによって、感情のレベルを知ることができるようにしたんです。1~10の数字を脚本に書いていました。本来、そういうことは監督がすべきですが、カーペンター監督は撮影で忙しかったんです。感情的にどのゾーンにいるのか――それを確認するためだけにやっていました」

撮影当時、カーペンター監督からは「彼女(=ローリー)としては、無防備でいて欲しい」と言われたそう。当初はそれを「弱さ」と解釈したそうだが、映画館でのある体験を通じて、真の意図を理解したそうだ。

「深夜、ハリウッドの映画館の後ろの席で『ハロウィン(1978)』を鑑賞していました。注目したのは、ローリーが友人2人と家に帰るシーン。当時、新たな機材としてステディカムが使われていて、カメラマンのレイ・ステラが反対側の道路からローリーの姿を追いかけ、彼女が家に辿り着くまでをとらえています。そのシーンが映し出されると、真ん中の席に座っていた女性が突然立ち上がって『家には入らないで、キラー(殺人者)がいるから!』と叫んだんです。それでもローリーは家に入ろうとする。映画館にいた観客全員が『Oh, no!』という感じでした。観客全員が“映画に参加している”と思えた瞬間、カーペンター監督の言葉の意図がわかったような気がしたんです。(『ハロウィン(1978)』公開から)44年間、観客は『私(ローリー)に傷ついてほしくない』と望み続けているんです」

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ハロウィン(1978)」出演後、その後のシリーズに参加するつもりはなかった。しかし、スティーブ・マイナー監督作「ハロウィンH20」で復帰。同作は、惨劇を生き延びたローリー・ストロードが“ケリー・テイト”と名を変え、郊外の全寮制私立高校の教頭を務めているという設定となっている。

「プロデューサーのクレジットがつけられていませんが『ハロウィンH20』のコンセプトは、私が生み出したものなんです。まず私は、カーペンター監督と製作者のデブラ・ヒルに電話しました。『2年後、ハロウィンの製作から20年になる。オリジナル映画から20年後という設定で、同じ俳優、監督、製作者が集まる。そんなこと誰も考えたことがないと思うから作ってみない?』と聞いて、そこから『スクリーム』シリーズのケビン・ウィリアムソンが脚本を書き始めました(完成作にウィリアムソンはクレジットされていない)。結局、カーペンター監督は脚本にも関わらず、デブラ・ヒルも参加しなかったんです」

カーティスの両親は、トニー・カーティス(「お熱いのがお好き」)とジャネット・リー(「サイコ」)。父のトニー・カーティスについては「(3歳の時に離婚していたため)あまりよく知らない」と話しつつ、カメラレンズのサイズについてのアドバイスなどを受けたことを告白。一方、母のジャネット・リーについては、こんなエピソードを披露してくれた。

「仕事の話をするような家ではなかったんです。母は、私が(精神的に)不安定になることを理解してくれていて『ただ自分らしく』と言ってくれていました。私にはその言葉が必要だと感じていたんだと思います。もちろん今の私には、その頃のアドバイスは必要ありません。当時の私は、ヘアカットや衣装を色々試していましたが、どこかで悪い選択をしていたと思います。63歳になって、ようやく自分のスタイルを確立した感じです」

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カーティスは、ローリーというキャラクターについて「皆にとっての妹、友人、娘、孫、あるいは姪でもある」と説明。「観客が気にかけ、ローリーを愛してくれたことで、私とローリーはひとつになって分離することはなくなりました。だからこそ、私は観客の皆さんに感謝しています。“ローリー・ストロード”のいない人生はあり得ませんし、このようなキャリアを持つこともできませんでした。ローリーが成り立っているのは、あなた方が観客のおかげです。神に感謝しつつ、皆さんに対して心から感謝しています」と語っていた。

ハロウィン THE END」は、23年4月からTOHOシネマズ日比谷、渋谷シネクイントほか全国公開。

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