自国では上映中止の冤罪サスペンス「白い牛のバラッド」 「プリズン・サークル」坂上香監督が解説

2022年2月10日 19:00


(左から)森直人氏、坂上香監督
(左から)森直人氏、坂上香監督

第71回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品された「白い牛のバラッド」のトークイベントが2月9日、都内で行われ、「Lifers ライファーズ 終身刑を超えて」「プリズン・サークル」など、刑務所に焦点を当てたドキュメンタリーを製作してきた坂上香監督、映画評論家の森直人氏が登壇した。

本作は、イランの厳罰的な法制度を背景に、冤罪による死刑で夫を失ったシングルマザー・ミナの姿を通し、社会の不条理と人間の闇を描く。イランでは2020年2月のファジル国際映画祭で3回上映された以降、政府の検閲により劇場公開の許可が下りず、2年近く上映されていない。

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作品を鑑賞した坂上監督は「主人公のミナの凛としたところ、淡々と生きていて、すごく自立していて、すごく魅力的で。そこにぐいぐい引き込まれた」と、本作の監督も務める主演のマリヤム・モガッダムの演技を森氏と共に称賛する。

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2人が褒め称えた迫真の演技の裏には、幼い頃、モガッダム監督の実の父親が政治犯として死刑になった過去がある。坂上監督は「この映画の中で死刑は無くせないと言っているけれど、モガッダム監督は死刑を無くしたいと思っていると思う。お父さんもそういう目にあっているし、そこを無くせると言うのではなく、無くせないもどかしさを描くことで、見ている側に考えてもらう手法をとっているなと思いました」と分析した。

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また、坂上監督は「ほんの短いシーンであっという間に終わっちゃうのですが、被害者遺族の妻がドア越しでミナを訪れるシーン。びっくりしたんですが、ちょっとイランの制度を調べてみたところ、被害者遺族が加害者を許してしまうことができるそうなんです」と印象深かったシーンについて話し、「改めてあのシーンを見ると、被害者遺族の妻は主人公の夫に対し、冤罪という罪を犯してしまったから本当の真犯人を許した。だからあなたも私を許してください、と言っているのだと気づいた」と説明した。

白い牛のバラッド」は、2月18日からTOHOシネマズ シャンテほか全国公開。

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