プリズン・サークル

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プリズン・サークル

解説

取材許可に6年をかけ、2年にわたり日本国内の刑務所に初めてカメラを入れて完成となったドキュメンタリー。官民協働による新しい刑務所であり、受刑者同士の対話をベースに犯罪の原因を探り、更生を促す「TC(Therapeutic Community=回復共同体)」というプログラムを導入している日本で唯一の刑務所でもある「島根あさひ社会復帰促進センター」。受刑者たちはプログラムを通じて、窃盗や詐欺、強盗傷人、傷害致死など、自身が犯してしまった罪はもちろんのこと、貧困、いじめ、虐待、差別といった幼い頃に経験した苦い記憶とも向き合わなければならない。カメラは服役中の4人の若者を追い、彼らがTCを通じて新たな価値観や生き方を身につけていく姿が描かれる。監督は「Lifers ライファーズ 終身刑を超えて」「トークバック 沈黙を破る女たち」などアメリカの受刑者をテーマにした作品を手がけてきた坂上香。

2019年製作/136分/G/日本
配給:東風
劇場公開日:2020年1月25日

スタッフ・キャスト

監督
製作
坂上香
撮影
坂上香
南幸男
録音
森英司
音楽
松本祐一
鈴木治行
アニメーション監督
若見ありさ
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(C)2019 Kaori Sakagami

映画レビュー

4.0懲罰ではなく心の回復としての受刑

2020年2月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

官民共同の運営で、日本で唯一「TC(Therapeutic Community=回復共同体)」を導入している刑務所を追いかけたドキュメンタリー。懲罰としての受刑ではなく、犯罪にいたった要因を探り、罪の意識と向き合わせ、自身の過去とも向き合わせてゆく。受刑者の多くは貧困や虐待を経験し、何かしらの常識や価値観が欠落している。いくら懲罰を押し付けても、価値観が伴っていなければ意味がない。この刑務所では、過去を紐解くことで罪に走ってしまった要因を自ら考えさせ、他者への想像力を養うように教育していく。
窃盗に罪の意識を感じ取れていない受刑者が出てくる。彼は「窃盗と罪を感じる心」そのものが欠落している、その欠落を回復させていくことで反省を促す。プログラムではロールプレイングと対話を通して人間性を回復させてゆく。受刑者のプライバシーを守るため、顔をぼかし名前は仮名にしているが、それもまた見事な演出となっている。アニメーションの使い方も見事で、目の付け所も、技法も素晴らしい作品だ。

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杉本穂高

3.0罪を憎んで人を憎まずとはい言うものの

2023年12月23日
iPhoneアプリから投稿

生まれつきの悪人はいない!そう信じたい。罪を犯したひとにも背景がある。更生のチャンスは与えられてもいいものだろう。人としての当たり前を知らずに育った若者4人をメインにカメラが追う。人として当たり前の感情を取り戻すべく矯正プログラムは進んでいく。せっかくのチャンス。苦しい道のりだっただろう。きっとこれからも楽ではないはず。どうかどうか、しっかりと歩いてほしいと願うばかりである。これからは支え合える仲間たちがそばにいるのだから。
この取り組みは刑務所の中だけでなく、我々の日常生活の中でも取り組めないのだろうか。傷つきに気づかないまま、自覚しながらもがき苦しんでいる人たちも世の中、珍しくないでしょう。社会全体で取り組むことで、もっと寛容な社会を作っていくことにつながるのではないだろうか。

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emukocyan

5.0暴力の連鎖を止めたいと思う全ての人へ

2023年12月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ということばでエンドロールがおわる。
ここにいる人たちは、そこに至るまでのそれなりの理由や経緯がある、そのことさえもここでTCというサークルに入ることで気づくこともあるように感じた。
赤ちゃんや幼児の頃の体験を思い出すことで生き直しをしようとするようなところも。
それでもやりたいことがなくても生きていこうとする姿が清々しくて、最後の取材者とのインタビューで、握手してもいいですかと照れながら明るく聞いて刑務官にダメと言われて決まりだし規則だし約束だけど握手とできないことが悲しかった。
砂絵の街の冷たい色のない風景。無関心と事なかれ主義の私たち。出所してもやる気、教育の効果だけではうまく転がらないこともある。
許し。赦し。
自分がこうなってしまった起因となる社会や環境いじめたやつへの赦し、こうなってしまった時分への赦し、被害者の許しと赦し。多くの方はら加害被害双方向の自己、対象との許しや赦しの授受を積み重ねていくのだろうし常に無関心になりがち、無関心を強いられがちな私たちも勇気を持ってそのサークルに踏み入れ踏み込み砂の町に彩りをつけていく努力が必要と思う。
それにしても日本のシステムの冷たいこと。

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redir

3.5被害者を思い出しながら

2023年12月2日
iPhoneアプリから投稿

TCという再発防止の更生プログラムの話。
加害者が再び社会に戻る前に、何が必要なのか。
それを丁寧に描いた映画だと思った。
しかし、上映当時に刑務所に収容されていた40万人のうち、更生プログラムを受けているのは40人程度で、しかもそのうち再入所しなかった人数は半数程度だという。
この構成プログラムに、どれだけ費やすべきなのか一考してしまった。
必要性は十分に理解するが、「社会」はどれだけそれに協力すべきなのだろう。

入所者でなくとも本心で話し合う場は
人生においてかなり重要なものだと思う。
どうしたら、そういう機会が増えるだろう。
SNSだけでなく、面と向かって話し合えるような機会、サークル。日本にはどれだけ少ないか。

この映画を観る上で勿論忘れてはならないのは
被害者の存在だ。
今回、映画で取り上げられたのは懲役10年未満の犯罪であるが、いずれも被害者がいることを忘れてはいけない。
更生プログラムで初めて自分の本心を話すことが出来て、仲間ができて、自分を見つめ直し無事社会復帰した青年に涙する映画では決して無いのだ。
おそらく監督の意向で、子供時代の思い出が語られるが、それで何かを擁護できるわけでは決してない。この映画はナレーションが無く、擁護では無いフラットな姿勢で彼らを映しているように見えた。
「暴力の連鎖」を止めようという時に、被害者の存在を忘れてはならない。
が同時に、ではいつ加害者は笑顔になれるの?と考えてしまった。
いつ社会に馴染めるようになるの?
常に贖罪し続けないといけないの?
いつ「虐待被害」から解放されるの?
「死にたい」と思わずに済むの?
いつになったら救われるの?
どれも擁護では無いが、彼らの人生の事実である。

ただ、坂上香監督が
「自分も「暴力の連鎖」を体現してしまったことがある。その為、それに向き合うのが自分のライフワークだ」
と語っているのを見て、何か納得したところがある。

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JYARI

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