取り壊される団地を宇宙船に見立て遊泳する幻想的なカット 「ガガーリン」場面写真7点公開

2021年12月29日 15:30


取り壊し間近のガガーリン団地と呼応するかのように、自分の世界の喪失と再生に葛藤する主人公
取り壊し間近のガガーリン団地と呼応するかのように、自分の世界の喪失と再生に葛藤する主人公

第73回カンヌ国際映画祭のオフィシャルセレクション初監督作部門に選出された、フランスの青春映画「GAGARINE ガガーリン」の場面写真7点が初披露された。主人公ユーリが、まるで宇宙飛行士のように団地のなかを浮遊する、夢と現実が入り乱れるシーンなどが切り取られている。

メガホンをとったのは、本作で長編監督デビューを果たしたファニー・リアタールジェレミー・トルイユ。圧倒的な映像美と世界観、そしてエモーショナルな物語が評価され、第93回アカデミー賞国際長編映画賞フランス代表の最終選考に残るなど、世界中のメディアから絶賛された。

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物語の舞台はパリ郊外に実在し、「地球は青かった」の言葉で有名なロシアの宇宙飛行士ガガーリンに由来する名前を持つ、赤レンガのガガーリン公営住宅。そこで暮らす16歳のユーリは、団地の名前に導かれるかのように、部屋の天体望遠鏡から空を観察し、宇宙飛行士になることを夢見ていた。

ある日、老朽化と2024年のパリ五輪開催のため、団地の解体計画が持ち上がる。ユーリは、いまも待ち続ける帰らぬ母との大切な思い出がつまったこの場所を守るため、友だちのフサームとディアナとともに、取り壊しを阻止しようと動き出す。消えゆく世界に留まりたい、団地から抜け出して夢を追いかけたいというふたつの気持ちの間で揺れるユーリは、空っぽになった無人の住宅を、大好きな宇宙船に改造して守ることを決意する。

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場面写真には、ユーリが居場所であると同時に、自身と外の世界を隔てる存在でもあるガガーリン団地から身を乗り出し、外を眺める姿を活写。間もなく取り壊される団地と呼応するかのように、自分の世界の喪失と再生に葛藤する、ユーリの思いが現れているかのようだ。さらに、レオス・カラックス作品の常連で、本作に特別出演したドニ・ラバンのカットも。ユーリがかけがえのない友フサームや、恋心を抱く自由で明るいディアナとともに駆け出す、エモーショナルな青春の一幕も確認できる。

レオス・カラックス作品の常連で、本作に特別出演したドニ・ラバン
レオス・カラックス作品の常連で、本作に特別出演したドニ・ラバン

リアタール監督とトルイユ監督は、ガガーリン団地が建設された1960年代当時の時代背景、団地名の由来、インパクトのある外観などに興味を持ったことが、製作の経緯であると語る。「ガガーリン団地は貧しい人々が住む極地的なエリアだ。メディアはこの地域の治安の悪さばかりを取り上げる。フランスでは、本作のような映画を『Film du banilieue』(郊外の映画)と呼び、その映画に描かれているもの全てについて、ある種の新しいジャンルであるかのように言う。しかし、それは違うと思っている。そこにはさまざまな語られるべきストーリーがある。たまたま貧しい古い建物が立ち並ぶエリアに住んでいるだけなのだ」と、疑問を抱いたことを明かす。

さらに、「団地に住む子どもたちのなかには、外界と交流をしたがらない子もいるが、本作の主人公のユーリにとって、団地は宇宙船で、宇宙船から外に出れば自由になれる、息が出来ると思っている、ただ団地は彼の母のお腹のなかと同じ。なかなか外に出る勇気が持てない。(団地を)そういう存在として描いた」と解説。その言葉通り、ふたりは解体前のガガーリン団地で実際に撮影を行い、ノスタルジックで幻想的な映像美のなかに、繊細な若者の心の機微を映し出した。

主演は、本作でスクリーンデビューを飾ったアルセニ・バティリ。高い演技力でユーリの揺れる心情を体現し、第17回セビリヤ・ヨーロッパ映画祭ほか各国の映画祭で主演男優賞を受賞した。そのほか「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」のリナ・クードリがディアナを演じた。

GAGARINE ガガーリン」は22年2月25日から、東京の新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開。

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