【「オールド」評論】まあ騙されたと思って、シャマラン先生のオモシロライドに乗ってみて!

2021年9月11日 17:30


「オールド」
「オールド」

「シャマランが、またやりやがった!」である。猛スピードで時間が進行する謎のビーチ。素っ頓狂なほどシュールな状況設定を、あの手この手で最高にエキサイティングに魅せてくれる。幼い子供たちはわずか数時間で思春期の姿にまで成長し、大人たちは老人になり、シッチャカメッチャカな珍事態が雪だるま式にエスカレートしていく。

一見、バカげたホラ話なのに、珍事件のマエストロ=シャマラン名人の一手がビシバシ決まりまくるので、観客も登場人物たちと同様に状況がサッパリわからないまま、迷宮のような物語に惹き込まれていくのだ。

クレジットでは原案扱いにされているが、本作にはほぼ原作と言っていいフランスのグラフィックノベル「Sandcastle」がある。基本設定もプロットの骨子もほぼ同じ。トリッキーなオリジナル脚本にこだわり続けてきたシャマランにしては珍しいパターンだ。

ただ「Sandcastle」は、これほどシャマランにピッタリな原作もないと思うほどの摩訶不思議な哲学スリラーで、本人が「これならやれる!やりたい!」と考えたのも当然だと思える。最初は強烈にヘンテコなシチュエーションに目を奪われるものの、話が進むにつれて、シャマランがドンデン返しやスリラーや笑いと一緒に描き続けてきた「家族」というテーマが浮かび上がってくるのだ。

わずか一日で人生が終わる。そんな過剰なシチュエーションを通じて、シャマランはひとつの家族が抱える葛藤や、避けることのできない諦念や達観、そして生きる喜びを凝縮してみせる。大げさな言い方になるが、本作が描いているのはもはや人生そのもので、スリラーや超常ミステリーの要素はデコレーションに過ぎない。特に「ここがクライマックスだったか!」と驚く海辺での家族のシーンは、静謐で美しく、まるで一遍の詩のようである。

さらに言えば、白人、黒人、ラテン系、アジア系と人種が偏らないようにキャスティングしていることも、このビーチを世界の縮図として描く意図があったと思うが、ひとまずはシャマラン先生のオモシロライドに乗っていただくのが一番なので、いつものように「まあ騙されたと思って」ご覧になってください。いろんな驚きが(感動すらも)待ち受けていると思いますよ。

(村山章)

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