西川美和×役所広司「すばらしき世界」がトロントでお披露目 映画祭でのQ&Aと特報映像を公開

2020年9月14日 05:00


トロントで高評価
トロントで高評価

[映画.com ニュース]米アカデミー賞の前哨戦となる第45回トロント国際映画祭へ正式出品された「すばらしき世界」が、9月10日(現地時間)ワールドプレミア上映され、西川美和監督と役所広司が記者会見にオンラインで参加。プログラミングディレクターのジョバンナ・フルピ氏に「脚本が非常によく練られストーリーが感動的。見事に質感がありリアルに感じられる。(主人公・三上を演じた)役所は、役の解釈がとても素晴らしくニュアンスと個性が豊かでカリスマ性を感じる」と絶賛された。また、海外メディアからも多くの称賛の声が寄せられた。

過去作「ゆれる」(06)で第59回カンヌ国際映画祭監督週間に出品、当時韓国で公開された折には、アートシネマの中で突出した記録となる6スクリーン15日間で30万人動員というスマッシュヒットを記録。「ディア・ドクター」(09)は日本アカデミー賞10部門他国内で数々の賞を受賞。「夢売るふたり」(12)でトロント映画祭スペシャル・プレゼンテーション部門正式出品、「永い言い訳」(16)はアジア各国に加えフランス、ポルトガルでも公開しトロント映画祭スペシャル・プレゼンテーション部門正式出品。西川監督作のトロント映画祭への出品は、本作で3作品連続の快挙となった。

同映画祭は、今年はコロナ禍の試みとして、ソーシャルディスタンスを守った劇場、ドライブインシアター、野外やインターネット上で披露され、レッドカーペットや記者会見はバーチャルで行われている。記者会見でのQ&Aは以下の通り。

リモートで会見に応じた
リモートで会見に応じた

Q.今までの西川監督の長編作品はオリジナルストーリーで、文学賞も受賞してこられました。「すばらしき世界」は別の方が書いた小説を原案とした初めての作品となります。社会になじもうとする元ヤクザを描いたこの物語のどんなところに惹かれましたか? また、佐木さんの原作「身分帳」にはどのくらい忠実に翻案されましたでしょうか。

A.(西川) 前作「永い言い訳」の撮影中に佐木隆三さんが亡くなられたと新聞を見て知りました。その記事の中で、佐木さんをよく知る作家の方が、佐木さんの真骨頂は非常に有名な「復讐するは我にあり」よりも「身分帳」ではないか、と書かれていたんです。それがきっかけでこの原作を手に取りました。そこで描かれていたのは、犯罪者が刑務所を出た後になんでもない日常を取り戻すために、こつこつと生きる地味な話だった(笑)。 これは、自分で探しても見つけられるテーマではないと思い、映画化してみたいと強く思いました。たくさんのエピソードが詰め込まれている小説を2時間の映画にどう集約するかということが、オリジナルで映画を作ってきた私にとっては、とても手こずった部分でしたが、2~3年かけて取捨選択して書き上げました。

Q. 役所広司さんの演技は息をのむほどで、この役にぴったりでしたが、三上役にはどのようにキャスティングされたのでしょうか。脚本の段階で役所さんを念頭に置いていたのでしょうか?

A.(西川) 17歳の時に、役所さんが連続殺人鬼の役をやられたテレビドラマを見ていたくショックを受け、それがきっかけでものを書く仕事に就きたいと思うようになりました。映画監督をやることになり、いつか役所さんを主役に映画を撮れないかと考えてきました。本作の三上という男は非常に面白い役なので、憧れの役所さんに一念発起してオファーをしたところ、「前向きに考えます」とお返事をいただき、それが自信となって脚本を書 き進めることができました。

Q.役所さん、三上の役の解釈がとても素晴らしかったです。ニュアンスと個性が豊かで、感動的かつカリスマ的でした。この役にはどのような準備をされましたか?

A.(役所) 原案である小説「身分帳」と西川監督が書いた脚本を比べて読みながら、小説はもちろんト書きが多いのでその部分は脚本と照らし合わせて、三上という男を探し求めていました。しかしこの男がなかなか掴めな かった。撮影が始まってから、ワンシーン撮ったものがまた次のシーンのヒントになり、少しずつ三上という男に 近づいていく感じがありました。あとは、ミシンの練習を一生懸命やりました(笑)。また監督と一緒に旭川刑務所を見学できたことは非常によい経験になりました。

すばらしき世界」は21年2月11日公開。現在、特報映像が公開中だ。

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