壮絶な女のバトルをブラックなユーモアで描いた天野監督「私なりの反戦映画」

2019年10月31日 19:28


ふたりの女の喧嘩が泥沼化していく……
ふたりの女の喧嘩が泥沼化していく……

[映画.com ニュース] 第32回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門に出品された「ミセス・ノイズィ」が10月31日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで公式上映され、天野千尋監督と主演の篠原ゆき子大高洋子長尾卓磨宮崎太一らキャストが舞台挨拶に立った。また、上映後には天野監督と脚本の松枝佳紀が観客とのQ&Aに応じた。

「この映画を一言でいうなら、女ふたりの喧嘩が泥沼化していくというお話。二人の仁義なき戦いをご覧いただけたらと思います」。天野監督は、舞台挨拶でこう切り出した。「この映画を作ってきた3年間、私は戦いについて考え続けてきました。人の正しい態度とはなんだろうと。喧嘩というのは、やっている本人たちは生々しい感情をぶつけて、悲劇が起こったり、人の人生を狂わせたりすると思うけれど、この映画の中でも、周りの人がふたりに振り回されていくところを描いている。でも客観的にみると、人の喧嘩ってエンタメ性もあるというか、楽しめちゃうものでもある。そういう要素もこの映画の中にはあるのですが、皆さんにもなぜ人が喧嘩してしまうのか、この映画を見て考えてもらえたらなと思います」。

運命の歯車が狂うほど泥沼化していく女たちの喧嘩とは……。きっかけは、1枚の布団をめぐるささいな口論だった。引っ越して来たばかりの真紀が、子育てと小説家としての仕事の両立に悩むある日、隣家から聞こえてきた布団を叩く音をうるさく思い、隣人の主婦・美和子に目くじらを立ててしまう。真紀は美和子の真実を知らぬまま、ふたりのトラブルは続く。やがて、その口論を映した動画がSNSで拡散されて悲劇は起こってしまう。

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シリアスなムードに包まれながら、コミカルな場面もあり多面的な顔を見せる本作だが、上映後のQ&Aでは創作秘話に話題が及んだ。物語の創作の発端は、3年前に松枝が主催したワークショップだったという。天野監督は、「去年のちょうど今頃がクランクアップだったのですが、撮影に入る2年前に、ワークショップをやりました。ワークショップの前から決めていたのは、『騒音おばさん』がモチーフの映画を撮ろうということ。そして物事は、見る角度によって見える景色が違う。人も別の角度からみると悪人にも善人にもなる、そういうことを盛り込んだ映画にしようということも、当初から構想していました」と述懐する。

主人公の真紀に天野監督自身が投影されているのかという質問に、「私はどちらかというと、あんまり喧嘩をしないタイプなんです。腹を立てることはあっても、客観的にものごとを見る方だと思います。世の中で喧嘩や対立、戦争、紛争が起こっているのを見ると、すごく虚しい気持ちになる。もう少し違う角度から見たら、起こらなかったんじゃないか、解決できたんじゃないかと、私は日々思っています。いってみれば、この映画は私なりの反戦映画になるのかも」と語った。

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