“あの時”一体何があったのか?前代未聞のアカデミー賞作品賞発表を「ムーンライト」監督が振り返る

2017年2月28日 19:20


「ラ・ラ・ランド」製作陣への親愛を 示したバリー・ジェンキンス監督 (写真上段の右)
「ラ・ラ・ランド」製作陣への親愛を 示したバリー・ジェンキンス監督 (写真上段の右)

[映画.com ニュース] 米ロサンゼルスで2月26日(現地時間)に行われた第89回アカデミー賞授賞式で3冠(作品賞、助演男優賞、脚色賞)に輝いた「ムーンライト」のバリー・ジェンキンス監督が、前代未聞となる作品賞発表時のミスが発生した際の様子を振り返った。

ブラッド・ピットが製作総指揮を務めた本作は、米マイアミを舞台に、貧困地域で暮らす黒人少年シャロンが自己のアイデンティティを模索するさまを、革新的な映像美と情緒豊かな音楽、詩的なセリフをちりばめて描く。シャロンの心の旅を3つの時代に分けて切り取っており、少年期をアレックス・ヒバート、青年期をアシュトン・サンダース、成人期をトレバンテ・ローズがそれぞれ演じている。シャロンの父親代わりとなる麻薬ディーラー・フアンを演じたマハーシャラ・アリが、初ノミネートにしてオスカーを獲得した。

作品賞発表時、手違いで主演女優賞(「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーン)の名前が刻印された封筒が手渡されていたことから、一旦は「ラ・ラ・ランド」の名前が呼ばれたものの、直後に「ムーンライト」に修正されるという急転直下の幕切れを見せたアカデミー賞授賞式。ジェンキンス監督は「ノミネート作品はすべて受賞に値する素晴らしい作品だから、(『ラ・ラ・ランド』が作品賞受賞と発表されたときには)結果は受け入れて、みんなと同じように拍手を送ったよ。すぐに騒ぎを知って、何かおかしなことが起きているとわかったんだ。みんなが僕の顔を見たけれど、結果を知ったときは言葉を失っていた。これまで、アカデミー賞でこのようなことが起きたことはないからね。だから、僕が想像もしなかった方向で、とても特別な感情になったよ」と感情の変せんを述懐する。

作品賞のプレゼンターは「俺たちに明日はない」で知られるウォーレン・ベイティが務めたが「(アカデミー側から)説明は特になくてね。ただ、(受賞結果が記された)カードが2枚見えたんだ。ウォーレン(・ベイティ)は最初に僕にカードを見せる前に、誰にも見せようとしなかった。階段をのぼってきて、僕にカードを見せてくれたよ。他の人が見たいと言っても『バリー・ジェンキンスがカードを見なければいけない。彼が知るべきだ』と言っていたよ」と心遣いに感謝を述べたジェンキンス監督。

「これは本当に伝えたいのだけど」と前置きし「『ラ・ラ・ランド』のチームはとても優しくしてくれたんだ。これまで半年間彼らと一緒に時を過ごしてきたけれど、僕が彼らの立場になったとして、あのように寛容になれるかなんて想像ができないよ。『ムーンライト』が受賞したということ、そして彼らの優しさに言葉を失ったんだ」と激戦を繰り広げ、6部門を制したライバルたちの心意気に打たれたと熱弁。授賞式では、「ラ・ラ・ランド」のプロデューサー、ジョーダン・ホロウィッツがジェンキンス監督に自らオスカー像を手渡す“神対応”を見せる姿が映し出され、多くの感動を呼んだ。

ムーンライト」は、「007」シリーズのナオミ・ハリスがシャロンの母親で麻薬常用者のポーラを演じ、オスカー候補に選出された。4月28日から全国公開。

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