映画界注目の入江悠監督、話題のアニメーション「9」を語る

2010年11月4日 16:43


「サイタマノラッパー」3作目も構想中
「サイタマノラッパー」3作目も構想中

[映画.com ニュース] ティム・バートンティムール・ベクマンベトフがプロデューサーを務めたCGアニメ「9 ナイン 9番目の奇妙な人形」のブルーレイ&DVDが、11月4日に発売。同作について、日本映画界期待の若手・入江悠監督が語った。

同作は、人類が姿を消し荒廃した世界で目を覚ました9体の人形たちの冒険を描くダークファンタジー。2005年のアカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされた、シェーン・アッカー監督のオリジナル短編「9」にほれこんだバートンが、新人のアッカー監督をプロデューサーとしてバックアップし、長編化を実現させた。

口コミでロングランヒットを記録したオリジナル作「SR サイタマノラッパー」で、第50回日本映画監督協会新人賞を受賞し、日本映画界が最も期待する入江監督は、同じ新人監督としてアッカー監督の手腕に最敬礼。「これだけ過酷な世界観を、妥協せず徹底してつくれたことはすごいですよね。普通は、もうちょっとお決まりの救いを入れたくなったりもするのでしょうけど。もちろん、ティム・バートンの力もあるかもしれませんが、監督に明確なビジョンがあったということは伝わってきました」

入江監督はまた、「見る前はもっと子ども向けかと思っていたら、見ているうちにこれはちょっと違うぞと。思った以上にダークで、いい意味で裏切られた」と満足そうに話す。「敵が強大で主人公たちが無力なところにリアリティもありましたね。世界に対する認識が甘くなくていいと思いました」

「サイタマノラッパー」とは、ヒーローになりきれない非力な主人公という設定が共通。入江監督は「『9』は人形たちがいきなり不条理な世界に放り込まれ、生きていかなくてはいけないというところが好きです。人間だって本来、みんなそうですから。大義名分のために生まれてきた人なんていないですから」と分析する。個性的な人形については「小心者の“5”が好きですね。あと保守的な“1”も、こういう人って現実にもいるよなと思いました」

アッカー監督は、大学の卒業制作からアカデミー賞候補になった短編、そして同作と約10年近く「9」に携わってきたという。入江監督も「サイタマノラッパー」2作を終え、3作目も構想中だが「その前に別の作品をやってからと思っています」と明かす。「違うものをやると、また戻ってきたときに広がりが出るというか、そこで得たもので違う豊かさが生まれますから。アッカー監督にもまた何か別の、こうした大人が楽しめるアニメーションをつくってほしいですね」

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