劇場公開日 2023年10月6日

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「んんん??という展開も多々あるものの…。」フラッシュオーバー 炎の消防隊 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5んんん??という展開も多々あるものの…。

2023年10月8日
PCから投稿

今年347本目(合計997本目/今月(2023年10月度)12本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))

 地震が契機になって発生する工場爆発の消火活動を描いた、中国映画でときどきあるタイプの映画です。とはいえ、「当局」のご意向なのかある程度美化されすぎ…という部分は一応あります。

 まずかなりの方がひっかかるのが、「マグニチュード3.1」でいいのか?ということです。
マグニチュードによる計測は国際標準で、気象庁ほかのサイトによれば「マグニチュード3程度は微小地震~小地震」とあります(震度の目安までは示されていない)。ただ、日本ではおよそ震度2~3がそれに該当しますが、日本が地震大国であると同時に、中国も「ある程度」はそうであり(地学的なお話)、「震度2~3程度であれほど災害がおきるの?」というかなり変です(映画自体の字幕も「3.1」となっているのを確認済み。しかし、余震も描かれるが、こちらは日本でいえば震度5弱はあるんじゃないかと思える、家の中の家具が飛び出すレベルの描写になっていて、何が本震なのかも怪しい??)。

 この映画はまずその部分がかなり謎なので、そのあとの展開も結構謎だったりします。

 ストーリー的にはその「程度が謎の」地震のあおりで大爆発・炎上を起こしている化学工場に取り残された人を救助し、また消火するというストーリーで、一応、中国映画でも中国本土の視聴者層向けのサービスというか、「恋愛パート」も一応入っているのですがそれはおまけ程度で、実際のところ「中国の消防行政はすごいですよ」という何かの宣伝的なにおいがかなりします。

 ほか、妙なまでに視聴者層が困る部分もあり、実質理系の方向けなのかなという気がします。メタノールやベンゼン程度であれば(これらは出る)まだ高校理科の範囲ですが、そこにさらにシアン化水素だのアジ化水素だのといったハイレベルな語を出してくるので(その割には水素だの塩素だのといった中学理科のことも出てくる)、かなりの方が「シアン化水素?」とかという点でハマります。

 ※ なお、この爆発は何らかの化学反応が関与したものとみることもできますが、出てくる情報が極端に少ないので、化学反応式を思いつくことすらできない(大学の化学(ばけがく)科を出ていればできるの?)というところです(少なくとも大学の理系共通の教養程度では何もできない)。

 どうしても映画の趣旨的に「お家の宣伝的な部分」が出てしまうのは中国特有の事情もあり仕方がないかなという気はしますが、日本ではこうした映画は「映画としてでも」作成のハードルが高く(消防行政に関する各種取締りの関係)、日本で作ろうと思うとCGだらけになってしまうところ、この映画も「ある程度は」CGなのだろうとは思いますが、かなり大規模でどれが本物でどれがCGかは見分けがつかないです。

 今週、3連休はいろいろな作品が入っていますが、「アジアものが見たい」ならおすすめの一作です(ただ、やっている映画館が極端に少ない…。シネマート系列くらい?)。

 採点は以下のようにしています。ちょっと厳しめかな。

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 (減点0.2/マグニチュード「3.1」が本当に正しいのかが謎??)

 多くの方が触れている通りで、「8.1」とか似た数字と勘違いしたのかなぁ…という気がします(公式サイトはともかく字幕もそうなっているので本当に謎。理科的な考証が雑な部分はある??)。この点かなり珍妙です(震度2、3程度の地震なら日本であれば毎日とは言わないものの、騒ぎにならないレベルであり一般的なものです)。

 (減点0.1/「あとは行政に連絡するだけ」)

 この「行政」が何を指すか…は、「行政」書士の資格持ちは混乱する文脈です。
日本や日本の影響を受けた韓国、また日本の行政法はもともとドイツですが(戦後はアメリカの影響も受けています)、日本で「行政」というのは「国家のいろいろな事柄から裁判所(司法)と国会(立法)を除いたすべて」という「引き算形式」を取るのが普通です。一見適当なようにみえますが、「ゴミ出し、市営バス、落とし物をしたら警察へ…戸籍行政…いろいろ…」をひとまとめに定義できる語が実はないのです。ですから「裁判所と国会以外がやることは全部行政」という、いってみれば「控除形式的定義」は現在でも学問上でも実務上でもよくとられています(まぁ、実務でこの話が出るのはレアだとは思いますが…)。

 ただ舞台は中国であり、中国だと国のシステムがまったく違うので、「行政」がどういう語の意味で使われているかはやや微妙な部分もあります(まぁ、この点、学問上の行政法を国際的にみるという、行政法と比較法学のクロス論点になるし、映画の主軸の話題でもないので、一応指摘はしますがこのくらい)。
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yukispica