劇場公開日 2023年11月3日

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「どうしてあんなに泣けたのか」人生は、美しい kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0どうしてあんなに泣けたのか

2023年11月7日
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鑑賞方法:映画館

「ハイ・フィデリティ」とか、昔の恋人に会いに行く物語って、男の視点で描かれることが多い気がする。異性の記憶のフォルダを増やすのではなく、上書きするのが女性の脳だと聞いたから。女性は昔の男のことを引きずらないものだと思っていた。でも、本作の主人公セヨンは違う。事あるごとに昔の写真を眺めて初恋を思い返す。そして自分の余命を知り、初恋の男性に会いに行くことを決意する。しかも夫と。
ミュージカルが得意でない自分にとって、途中で挟まれる歌とダンスのシーンが結構辛かった。いや、ミュージカルでも歌とダンスに圧倒されることがあるから、ミュージカルだからという理由ではない。たぶん歌のシーンがとてもダサいからなんだと思う。とにかくダンスがやたらとダサかった。ワザとか?と思うくらい。ただ、曲はすごくいい。韓国の往年のヒット曲が使われているらしく、昭和歌謡の名曲を聴いているような心地よさがあった。
話の方は韓国のおじさんらしい不器用さ(を通り過ぎてもはや極度のモラハラ夫だったが)がひどすぎて感情移入しにくい。後半の夫の行動で今までのすべてが帳消しになるわけじゃないし、妻の行動もやや不思議。初恋の相手との結末もあんなんでいいのか?と思ってしまう。とてもシリアスで悲しい題材なのに、ポップでコメディテイストなところにも終始違和感を覚えていた。
踊りのシーンも今ひとつだし、いろいろと受け入れがたいものがあるのに随分と泣いてしまった。どうしてこんなに泣けてしまったのだろう。自分が戸惑ってしまうくらい。おじさん特有の涙腺のゆるさだけが理由ではないはず。万人には勧められない。マイナス面が多いから。でも、泣ける人も少なくないはず。周りで鼻をすすっていたおじさんたちに強い仲間意識を感じた。

kenshuchu