劇場公開日 2023年8月4日

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「かつて味わったことのない視点で描かれた海兵隊ドラマ」インスペクション ここで生きる 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0かつて味わったことのない視点で描かれた海兵隊ドラマ

2023年7月31日
PCから投稿

A24の手掛ける作品群はいつも、これまで被写体となる機会のなかった人や物事に光を当てる。その光は、こうあるべき、こうでなくては、と我々をがんじがらめにする意識の鎖を取り除き、身軽にしてくれるかのようだ。その持ち味は本作でも変わらない。冒頭、主人公が地下鉄に乗り、街をゆく。たったそれだけの描写でも、彼の身にまとう赤い衣服が鮮烈に映え、都市のこれまで見せたことのなかった表情が浮かび上がる。そして彼がやがて海兵隊を志願する理由も、我々の固定観念を鮮やかに突き崩すものだった。なぜなら彼はセクシャリティを抑圧して他の兵士と均一になろうとするのではなく、むしろ厳しい訓練に耐え抜くことで胸を張って「自分らしく」生きようとしているのだから。その意志の強靭さ。思考の柔軟さ。仲間や上官との交流も味わい深い。アニマル・コレクティヴの音楽がまた素晴らしく、色とりどりの響きが主人公の生き様に祝福を与えるかのようだ。

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牛津厚信