劇場公開日 2023年6月30日

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「私たちの生活は「外国人奴隷」によって支えられているという現実」縁の下のイミグレ momotaroさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0私たちの生活は「外国人奴隷」によって支えられているという現実

2023年7月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

消費税の嘘を暴いた日本初の映画『君はまだ長いトンネルの中』の監督もである、なるせゆうせい氏の新作映画。

外国人技能実習制度という”現代の奴隷制度”によって日本に出稼ぎに来ている外国人が仲介業者の「中抜き」によって多額の借金を背負わされ、中には給料未払いにされるような事態になっても保護される法律もなく、転職もできないという劣悪な環境にあるにもかかわらず、政府はそんな実情を隠して、ある意味「騙して」借金漬けの外国人を働かせているということ。 そして、その奴隷のような境遇で働いている外国人がいるからこそ、私たちは「安くて美味しい食べ物、安くて質の高い品」が得られるということ。

そもそも日本は30年間賃金が上がらないどころか所得中央値が130万円以上も下落し、さらに現在も実質賃金もゴリゴリに下がり続けている国。 にもかかわらず、日本人でも嫌がるような仕事を騙して借金漬けにして日本に連れてきて働かせてるんだぞ。 ブラック薄給で有名な日本人「以下」の仕事をさせられてる外国人に対して「人権をきちんと守って」なんて出来るわけがないだろう。 先日の入管法改悪を立法根拠ゼロにもかかわらず強行採決したように、日本政府は人権も憲法もまるで守る気がない。

難民だけじゃなく、働きに来た者でさえも奴隷労働力が欲しいだけなんだよ。そして『外国人を騙して簡単に奴隷労働力が手に入るので、日本人の待遇を良くしなくても済む』という悪循環に陥っている。 これだけ賃上げ賃上げ騒いでいるにもかかわらず何処の会社も店舗も時給は大して上がってないだろう?つまりはそういった理由からだ。この映画は「外国人の出稼ぎ労働者」をテーマにした映画だが、モロに私たちの生活に反映している映画だということ。

同じ日本国内に済んで生活し仕事をしている者同士、綿密に繋がっている「別に外国人のことなんか自分は関係ないや」ではなく、信じたくなかろうが残念ながらしっかりと影響を及ぼされているんだよ。この考えを頭に入れてから映画を観ると、さらに理解度が増してよりのめり込めると思う。

なるせゆうせい監督は、地上波メディアが扱えないテーマを掘り下げ映画という媒体で世に問うてくれる稀有な存在、今回も日本の抱える闇をエンターテイメントの形式を取り、ライト層にも楽しめる作品として仕上げていただいた。興味持った方は是非映画館へ足を運びに行くことをお薦めする。

momotaro