劇場公開日 2023年8月18日

  • 予告編を見る

「私の町にも豆腐屋があつた。」高野豆腐店の春 アツサミーさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0私の町にも豆腐屋があつた。

2023年9月7日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

幸せ

私は散歩を日課としている。最近身近で増えたもの。
・不登校の相談所 放課後ディサービス
・税理士や司法書士、法律関係の事務所
・ちょっと前は認定保育園、個人型の塾、外国人労働者。
逆に減って来たもの
・マスク姿
・スマホショップ、
・ちょっと前は新聞配達屋
・かなり前が個人商店のお店、八百屋、肉屋、魚屋などなど。大抵の町には映画館、銭湯と貸本屋、それにこの映画の豆腐屋があったものです。

昨日のNHKのゆう5時、クロスロードに藤竜也が出演し人生の転機になった出来事について語っていた。何も無いことこそが役者としての武器であり、原点になったと。まっさらな状態に成れる、そうして無骨に役作りに徹すると。職人3部作の完結編たる高野豆腐店の春を取り上げていたので調べてみたら、地元では今日が最後の上演日。で朝から見てきた。

尾道を舞台にする必要性があったのだ。
・それは今まで数々の映画の舞台となって来た地をオマージュして。
・広島、原爆との関係性で。
・造船所と坂道 海峡を挟んだ街 こちらとあちら側。

映画ロケ地の尾道は今の尾道でありコロナ禍の尾道だろう。しかし設定は平成の終わり、平成29年の横断幕が商店街に掲げてあった。場所と時の設定をキッチリしたのには、監督が伝えたい想いが明確にあったからだろう。

令和はその元号も退位の仕方も人工的だ。語感がスマートで、皇室の働き方改革に繋がった。その一方で戦後レジームからの脱却は行きつ戻りつしつつ、政府与党が狙った方向に徐々に向かっているとも思う。
コスパやタイパが重視され、結果にコミットすることがより求められる。息苦しさや心の低温火傷状態に沼る事が増えた気がする。

・添加物で豆腐という商品を形作り、それが日本の伝統食品として健康志向に敏感な海外で売れる方向で本当に良いのか?
・乳がんの手術を控え鏡の中の自分を見て号泣する。孤独と不安に苛まれ、もがく。
・被爆二世のふみえと、彼女を支えようとする何重もの地域コミュニティの和。

それを、美しい國ニッポン、とパッケージするよりも、派手さはなくともジミに骨骨と働くことこそ、より本質だと監督は語っているのだろう。時代に合わせて変化はすれど、ニーズの本質は見失わずブレず。

アツサミー