劇場公開日 2023年8月19日

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「壁に囲まれ陰鬱で自由な西ベルリン」アル中女の肖像 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0壁に囲まれ陰鬱で自由な西ベルリン

2023年8月21日
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鑑賞方法:映画館

笑える

知的

難しい

スタイルよく美しくエッジの効いたドレスのブルーメンシャインはどこまでもかっこよかった。灰色のベルリンの壁、灰色の建物、灰色の空、アルコール依存症研究者の女性3名がお揃いのように着ているスーツの灰色千鳥格子をぶっ飛ばすようなカラフルなドレスを何着もブルーメンシャインはとっかえひっかえ着る。一言も話さず酒を飲みだんだんと酔う姿が見事でキュートだった。映画としてよりも写真集としてこの作品を手元に置きたいと思った。

彼女がテーゲル空港に到着してからの空港アナウンスがおかしかった。その内容に反するかのように、スーツケースぶちまけに始まり、どこでも鞄なりスーパーのカートなり酒のグラスがぶちまけられて秩序や整理整頓とは真逆状態。

ソレンティーノの「グレート・ビューティー」を思い出した。あちらはローマ、美しく天気もいいローマ、セレブ達の狂乱パーティーで始まる。こちらはベルリン、曇天の冬は寒いベルリンで一人の女がひたすら強い酒を飲む、当時のクロイツベルクなど場末感たっぷりの区域で。唐突に車が、人間が、自分の意志で壁に向かってぶつかっていく。背丈が極めて低い年輩者が主人公に寄り添う。棺。うーん、ソレンティーノ、この映画見たかなあ、見ていて欲しいなあ。

南ドイツだかオーストリアだかスイスを小馬鹿にしたようなシーンは笑えた。ドイツと言えばのビール、ザウアークラウト、ソーセージ、加えてヨーデルに民族衣装!やめてくれー!

今の、どこもピカピカして安全そうで清潔で洗練されて観光客たくさんのベルリンからは想像もつかない昔のベルリン。都市の記録としても意味がある映画だと思った。

おまけ
1)ニナ・ハーゲンが出ていて嬉しかった。可愛くて声きれいで歌良かった!
2)数字が好きだな、ドイツ人。でも未だにその数字が示すデータは同じだ。ベルリン、ハンブルク、ヘッセン州は酒飲み多いだろうがリベラル。対して南はまだまだ保守的だ。

talisman
ミカさんのコメント
2023年9月5日

カメラがとても綺麗でしたね!

ミカ