劇場公開日 2023年5月13日

「ダメ人間のレクイエム」いずれあなたが知る話 しんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ダメ人間のレクイエム

2023年5月1日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

試写会にて鑑賞。
写真を志す青年とその隣に住む母娘が主人公のノワールサスペンス。
ビジュアルや予告編から予想していた通りのダークな手触りのサスペンス作品でした。
娘を誘拐された母親がとる意外な行動、そしてそれを隣の部屋から覗き見る男。
人間の普段押し隠しているダークな部分やダメな部分がストーリーの根底に置かれていて、それがストーリーを推し進める推進剤となっているのですが、そうしたダメな人間たちの堕ちていく様を突き放すでもなく、べったりと寄りそうでもなく、絶妙な距離感で描いています。
なので、暗澹とした映画になりそうでいて、実はある種のカタルシスを感じたりもしますし、キャラクターたちの姿に滑稽さを感じ愛おしさすら感じたりもします。
たぶん、自分のなかにもこの映画の主人公たちに共感できる部分があるからなのかもしれません。
我々の日常と地続きでありながらも、ほんのすこしずれたところで起きるとんでもない事件。
観客はそれを劇場のスクリーンから覗き見るように鑑賞することになります。
この作品は役者である小原徳子さんと大山大さんが中心となって役者主導で企画された作品とのこと。
小原徳子さんは今回、初の脚本も手掛けています。
こうした試みが映画の新しい扉をひらいてくれる予感もこの作品から感じました。

しん