劇場公開日 2023年3月17日

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「海上の城。」ハンサン 龍の出現 レントさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5海上の城。

2023年3月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

秀吉による明侵攻の足掛かりとして行われた朝鮮半島への侵略、いわゆる文禄・慶長の役における海戦の一つ、前作「バトルオーシャン」で描かれた鳴梁海戦より前の閑山島海戦を描いた作品。三部作ということなので次は李舜臣が戦死した露梁海戦が描かれるらしい。

戦国時代を経て天下統一を成し遂げた秀吉の軍に対して朝鮮軍は彼らの敵ではなく、短期間で半島のほとんどを侵略されてしまう。しかし、日本軍は半島の奥まで北上し過ぎたために補給路を断たれ苦戦することとなる。
数では圧倒するはずの日本軍は李舜臣将軍の知力をつくした戦術に苦しめられるが、結局この時の朝鮮半島侵略は秀吉の病死を機に日本軍の撤退で幕を閉じる。しかし、後に大日本帝国の植民地支配に甘んじることとなった朝鮮半島の人々にとっては最後まで勇猛果敢に国を守るために戦った李舜臣の姿がいまだ英雄と称えられるのは充分理解できる。

映画は日本側の脇坂と朝鮮側の李舜臣の両者を同等の時間を割いてバランス良く描いている。歴史的事実についてもかなり史実に則した偏りのないもの。
両者とも相手側に密偵を送り込み互いの戦略を探り合いながらじわじわとクライマックスの海戦に向けてストーリーは進む。
多勢に無勢、圧倒的不利な状況下で地形や潮の流れを利用し巧みな戦術を駆使し、そして最後には味方にも秘密にしていた切り札で李舜臣は勝利を納める。
クライマックスのCGを駆使した海戦シーンは日本映画では予算、技術的に不可能な程の迫力ある出来栄えだった。

ただ、出来れば相対立する両者の人となりをもう少し掘り下げてほしかった。やはり登場人物たちに感情移入出来ないとクライマックスの戦闘シーンにもハラハラ出来ない。

あと間者の侍女のバックストーリーなんかも少しでいいから入れてほしかった。両親を日本軍に殺されたというようなシーンを入れるだけでこれも感情移入出来たはず。
恐らく本作はそういった部分を確信犯的にバッサリ落として、海戦だけを楽しませようという意図で作られたのではないか。

韓国の英雄を称える作品なので韓国でのヒットはうなずけるが、出来れば歴史に疎い他国の人間でも楽しめる作品にして欲しかった。

ちなみに去年、京都観光の折に豊国神社のそばにある耳塚を見てきた。朝鮮出兵の戦果として朝鮮兵の鼻や耳をそぎ落とし塩漬けにして秀吉に送っていたものを供養して祭った塚だが、大名たちが数を競うあまり、女、子ども、赤子のものまでそぎ落としていたという。
日本史の授業なんて年号を暗記するだけのものになってしまってるので京都観光の折には訪ねても良いかもしれない。

レント
NOBUさんのコメント
2023年3月24日

今晩は。
 豊国神社の耳塚。朝鮮出兵の戦果として朝鮮兵の鼻や耳をそぎ落とし塩漬けにして秀吉に送っていたものを供養して祭った塚。
 良く知っております。
 豊臣秀吉の朝鮮出兵の愚かさ、そしてそれに盲従する武将たち。義の無い戦は、何も生み出しませんね。
 現況下もそうですね。イヤハヤ・・。今作は倭の民としては苦き想いを感じる作品ですが、人類はホント過去に学びませんね・・。
 では。返信は不要ですよ。(今作、もっと多くの人に見て欲しいと思っているのは私だけでしょうか・・。)

NOBU