「個人的には意味不明」君たちはどう生きるか 臥龍さんの映画レビュー(感想・評価)
個人的には意味不明
鑑賞直後の感想としては『まったく意味が分からない』。
物語の前半は現実世界の話で、後半は異世界の話。前半までは順調に理解できていたが、異世界に飛んだ途端、理解不能に陥った。
盛り込むだけ盛り込まれた情報を消化しきれないまま『誰?』『なぜ?』『どうして?』『どういうつもり?』が積み重なり、その疑問を解消する間もなく物語が進んでいく。
人生で初めて授業についていけない子供の気分を味わった。笑
帰宅後、様々なレビューや評論を見て、一番しっくり来たのが『異世界はジブリの暗喩』という解説。
異世界を【スタジオジブリ】、異世界を司る大叔父様を【宮崎駿】、13個の積み木を【過去の宮崎駿作品】に例え、これまでスタジオジブリ【異世界】を支えてきたのは宮崎駿【大叔父様】であり、宮崎駿が送り出した13作品【13個の積み木】がこれまでジブリの経営を支えてきが、その経営は非常に脆く(積み木の危ういバランスがそれを表している)、宮崎駿の後継者は未だ見つからず、作品がコケればすぐにでもジブリは崩壊してしまう(積み木の崩壊とともに異世界も崩壊)。
異世界に登場する無数の鳥は【アニメーター】に例えられ、彼らはジブリの中では怖いものなしだが、ジブリから一歩外へ出れば、彼らはたちまち弱い立場に置かれる危うい存在だとも捉えられる。
個人的にはこの解釈が一番しっくり来たのだが、この解釈でも説明できない部分は多々あり、また、人により解釈は様々あってどれが正解とも言い難い。
最終的に行きついた結論としては『理解しようとしたのが間違い』ということ。
普通、映画というのは監督の伝えたいメッセージがあり、それに沿って物語を肉付けし、観客は映画に込めた監督のメッセージを読み解いて成立するのだが、この作品は見る側が想像力を膨らませ、好きなように自分なりの解釈を加えて楽しむ現代アートのような作品なのだと思う。
この場面ってこういう意味なんじゃない?この人物ってこういう人なんじゃない?といった具合に、想像力を膨らませながら楽しむ作品なのだと思う。
想像を膨らませるのが好きな人にとってはこの上なく楽しい作品だが、自分のように映画からメッセージを読み解こうとしたり、物語の整合性を求めたりする人にはまるで理解不能な作品だったと思う。
Kazu Annさん、コメントありがとうございます。
『宮崎アニメの本質的な素晴らしさは、各ショットの素晴らしいイマジネーションに基づく映像』
レビューではストーリーの解釈に終始したため書き漏らしてしまいましたが、映像美の素晴らしさはまさに仰る通りで本当に素晴らしかったと思います。
レビューを高く評価していただき、有難うございます。
私も1週間隔で、2回見ております。2回目も1回目以上に楽しめましたし、またより深いところで感動いたしました。
そうですね。ご指摘通りこのサイトでも多くの方により様々な解釈がなされていて、それを読んだり、話したりするのは大きな楽しみです。
そして、宮崎アニメの本質的な素晴らしさは、少なくとも自分にとっては、各ショットの素晴らしいイマジネーションに基づく映像で、この点でも日本の代表的アニメーター組織が結集した、この映画の完成度には凄いものがあると思っています。