劇場公開日 2023年4月28日

「色彩のない世界を彩る青い春と糞便。」せかいのおきく レントさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5色彩のない世界を彩る青い春と糞便。

2024年2月22日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

楽しい

知的

なぜ本作がモノクロなのか、確かにいきなり冒頭からの肥溜めのシーン、これを総天然色でみせられた日にはたまったもんじゃありません。モノクロはそのためかと思いきや、監督のインタビューに納得。
確かにモノクロの世界はフィクション、色彩を感じられる我々にとっては現実にはあり得ない世界。だが映画では色彩という情報をあえて省くことで人物の感情表現を敏感に感じ取れるのだという。なるほどこの言葉には何だか妙に納得してしまった。

ただ、元は環境問題を考えるプロジェクトから始まった本作、循環社会という観点から排泄物に着目した人々の暮らしという物語は必須だったわけで、やはり排泄物を描かないわけにはいかない。それを総天然色で見せるなら客足も遠のくだろう。排泄物の色彩再現も大変だろうし。そういう意味でも本作をモノクロ作品としたのは大成功だった。

江戸の町で底辺とされる汲み取り業を営む若者たち、虐げられながらも若さゆえの負けん気で逆境を跳ね返す逞しさ。二人の主演のバディ関係は絶妙だし、淡い恋愛劇も良かった。
さわやかな青春と淡い恋心が色彩のない世界に彩りを与えていた佳作。

ちなみに筒井康隆の小説で人間は口から肛門をつなぐ一本の管のような存在だというくだりがあった。その管の周りに手足がついてるだけの存在。そう考えれば百姓も武士も身分の違いなど気にするようなものではないのかもしれない。食い物を口に入れて肛門から糞便を垂れ流すのはみんな一緒だ。もちろん黒木華さんもね。

先日参加した大腸がんシンポジウムで権威ある医師の方が40を超えたら検便は年に一回欠かさずやってほしいとのこと。便を汚いものと目をそらさず、さっきまで自分の中にあったものとして慈しんでやってくださいと。便は教えてくれます、あなたの体調を。便はいまのあなた自身だと。
今や下水道が完備されて排泄物はさっと水に流してしまう時代。自分の便を汚いものとして目をそらす現代人は自分の本来の姿を見失っているのかもしれない。自分を見つめなおすためにも、水洗レバーを引く前に自分の便を一度見つめなおしてみるのもいいのではないだろうか。
なるほど、確かに朝に出る便を眺めることで自分の生活態度や食生活、その日の体調がわかる。下痢便かバナナのようなきれいな便か。ちなみに毎晩のように晩酌をしている自分は下痢便が続いている。飲酒は控えねば。

レント
humさんのコメント
2024年2月22日

はい、楽しく受け取りました♪
映画をたのしむためにも!

hum
humさんのコメント
2024年2月22日

そぎおとして浮き上がるものですね。なるほどです。
後半についても、大変納得。
そこからわかることのために、しっかり向き合っていこうと思いました😌

hum