劇場公開日 2023年2月10日

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「昔愛した作家」崖上のスパイ シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5昔愛した作家

2023年2月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

巨匠チャン・イーモウ作品ももはや惰性で鑑賞してしまうのだが、かなりコンスタントに作品を作ってくれている。
少し前に観たロウ・イエ監督とはもう既に中国国内での立場が違うからなのか、ある時期からは自分が本当に作りたい作品を作れる環境でも状況でもなくなってしまっているのでしょう。
恐らく、チャン・イーモウにロウ・イエ監督の様な映画作りはもう不可能な状況の中での、映画作りに対する情念だけが残っている状態の様にも思えた。
作家性とは言っても己の信条や哲学を規制されても、己の職人的な技術や技法など表現が可能ならば、それだけでも映画を作り続けたいという欲求が彼の中にまだまだ枯れず沸々と湧き出て、今の作品にはある種振り切った感が感じられます。
物語などはもう殆ど興味やこだわりが無く、どんなに定型的な物語でもその定型の中で人物の心情やら機微などを描く技術はもう十分にあり、ストーリーなど表現手段の乗り物として存在しているだけの様にも思える。
で、本作では“雪”という素材をテーマに自分の中のイメージをどれだけ表現で出来るか試したかったのでしょう。
前回の『ワン・セカンド』は“砂漠”、その前は“雨”だったかな?、彼の中ではまだまだ表現したいテーマが無数に存在しているのでしょうね。
どんな状況でも、死ぬまで映像作家であり続け映画を作り続けて欲しい作家ではあります。

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シューテツ