劇場公開日 2023年5月26日

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「新しい!けど盛り上がりはイマイチ」クリード 過去の逆襲 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0新しい!けど盛り上がりはイマイチ

2023年11月17日
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鑑賞方法:映画館

今作品を観て最初に感じたのは「新しい時代になったんだなぁ」ということ。
ファイトスタイルも、リッチになってからのファッションセンスも、ビアンカとの夫婦関係も、徹頭徹尾泥臭かった「ロッキー」シリーズと比べて、アドニスは新世代らしいアップデート感がある。
まぁそもそも子ども時代として描かれる年代眼が2002年なのである。20年前なんだから当然と言えば当然なのだが、そりゃあ新しさを感じるわけだよ。

舞台装置的な新しさだけではない。前作「炎の宿敵」で激闘を繰り広げたドラゴ(息子)が、パーティに来てくれたり、スパークリングパートナーをしてくれたり、めっちゃフレンドリーなのだ。
アドニスとドラゴはただの対戦相手ではなく複雑な仇敵関係だったというのに、なんかもう普通の友達。何なの、ドラゴめっちゃイイ奴じゃんか!これが新時代のライバルなのか。

もう一つ、新時代だなぁと思ったのは、「クリード過去の逆襲」がかなりの黒人映画でありつつも、過去の黒人映画とは全く別のアプローチでこのテーマを描いていることだ。
今までの黒人映画とは「歴史的にこんなことがあった」という啓蒙活動的なものだった。悲惨な事件、差別と戦う姿、そういった歴史をドラマにして次世代に残すもの、それが黒人映画の系譜なのだ。
一方、「クリード」は大半のキャストが黒人でありながらも、そういった問題にはほとんど触れない。触れないが、劇中で「過去を無かった事には出来ないが、過去にとらわれ過ぎてはならない」話は何度も繰り返される。
そして、互いに謝り互いに許し、互いに「あなたが悪いわけじゃない」と歩み寄るのだ。
これまで「じゃあ、どうしたら良い?」に答えて来なかった黒人映画に対して、「許したい」「理解したい」を明確に打ち出した新時代映画と言えるだろう。

個人的に、ファイトシーンの演出はかなり気に入ったし、今まで述べたように新機軸を打ち出しつつストーリー自体を手堅くまとめきった部分はかなり評価できる。
が、なんか今ひとつ盛り上がりに欠ける感じはある。
あくまで「クリード」シリーズであり、「ロッキー」シリーズと比べるのはお門違いだと思うが、ロッキー・バルボアに比べてアドニス・クリードはマトモ過ぎて遮二無二に応援できないのだ。
ロッキーは単純で口下手で基本的にダメな奴なので、「俺に出来るのはボクシングだけだから」的な展開に「まぁ、ロッキーに色々求められないもんな」と思える。ひどい言い方だが、ロッキーからボクシングを取ったら何も残んないだろ、だから頑張れ!ってこと。
対してアドニスは「いや、お前なら他にも色々とやりようがあるでしょ」と思ってしまう。
娘に合わせて手話もできるし、おままごともできるし、ジムの経営も出来る(何ならちゃんと利益を出してチャンプも育ててるし、改装だってやれる。やっぱりロッキーとは違いますな)んだから、わざわざリングに上がらなくても良いんじゃない?と感じちゃうのだ。

もしかしたら「炎の宿敵」が良過ぎてハードルが上がり過ぎちゃったのかもしれないけど。

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つとみ