劇場公開日 2024年2月23日

「ツッコミを入れる隙がないくらいスピーディな『セブン』ミーツ『シックス・センス』」神探大戦 よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ツッコミを入れる隙がないくらいスピーディな『セブン』ミーツ『シックス・センス』

2022年11月22日
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鑑賞方法:映画館

15年前のジョニー・トー監督作『MAD探偵7人の容疑者』の後日譚的な作品だと言われてもそっちを観てないので何とも言えないところ。しかし後日譚“的“というところにいかにも香港映画的な商魂が滲んでる感じがしますね、春頃に観たアンディ・ラウ主演の『バーニング・ダウン 爆発都市』も『SHOCK WAVE ショック ウェイブ 爆弾処理班』の続編“的”作品でしたし、要はそっちはあんまり気にしなくてもいいよってことだと解釈しました。

香港の街で猟奇殺人事件が発生、“神探“(神の捜査官)という巨大な文字が残されていた。その頃かつて“神探”と呼ばれた刑事だったが深刻な精神障害により職を追われたリーは独自の捜査で殺人事件を追うがリーを嘲笑うかのように次から次へと殺人事件が発生、しかもそれらの事件の犠牲者にはある共通点があった。

これがもうびっくりするくらいメチャクチャな設定で、主人公のリーは死者、もしくはこれから死ぬ人の霊魂と対話が出来る霊能力者。よって誰よりも早く殺人現場に駆けつけるわけですけど、殺された人間の霊魂と会話しながら街中を走り回るわけですからそりゃ周りから見たら頭おかしい人間にしか見えない。この辺りは『Mr.Boo!ミスター・ブー』でも観ているかのようなデタラメぶりで何度も笑わせられますがいかんせん演じているラウ・チンワンの表情が真剣そのものなのでちっともギャグに見えません。そんなキテレツなオッサンとコンビを組むのは妊娠中の女性刑事イー・チョン。別に上官でもなんでもないリーの奇行に振り回されながら犯人を追う中で自らの閉ざされた過去にも向き合うことになるという怒涛の展開は猛烈にスピーディで脳裏に浮かぶ疑問符を片っ端から蹴り飛ばしていきます。冒頭の意味深なカットを巡るドラマに2重3重のミスリードが仕込んである複雑なプロットに翻弄された後のクライマックスには香港ノワールの芳醇な香りが立ち込めますがドラマはそこで終わらない。『セブン』と『シックス・センス』を足して13で割って圧力鍋で煮込んだみたいな凶悪極まりない猟奇サイキックコメディアクションスリラーはフルコースの中華料理みたいでお腹一杯です。

ちなみにイー・チョンを演じているのはかつて香港のアイドルユニット、ツインズの一人として活躍していたシャーリーン・チョイ。それももう20年くらい前の話なんですけど未だにめちゃくちゃキュートでビックリしました。

よね