「二つの物語が唐突に激突する社会風刺に塗れた辛辣で赤裸々なラブストーリー」カイマック よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0二つの物語が唐突に激突する社会風刺に塗れた辛辣で赤裸々なラブストーリー

2022年11月5日
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鑑賞方法:映画館

舞台は首都スコピエ。高層マンションに暮らすメトディとエヴァはなかなか子供が出来ず、貧村に暮らす少女ドスタを代理母にすべく共同生活を始める。一方貧民街に暮らす主婦のダンシェは警備員の夫カランバが市場で働く自宅でヴィオレトカと不倫をしていたことに気付き、ある日ついにその現場を押さえるが・・・。

高層マンション群の足元に広がる貧民街というもはや世界中の都市に見られる風景の中で繰り広げられるインモラルな二つの物語がとあるきっかけで激突する様に顔面がひきつるトラジコメディ。ご当地スイートの“カイマック”が象徴するのは誰しもが求めてやまない幸福であり、同時に他人の幸福を粉々にするきっかけにもなる。恐らくは北マケドニアにおいても顕著であろう壮絶な格差社会を皮肉りながらも『フォレスト・ガンプ』や『アメリカン・ビューティー」へのオマージュが漂うロマンティックなカットもあるし、警備員のカランバが『タクシー・ドライバー』のトラヴィスに憧れていることを匂わせていたりして往年の名作へのリスペクトも滲んだクセが強い作品でした。

上映後の舞台挨拶とQ&Aには監督のミルチョ・マンチェフスキ、ドスタを演じたサラ・クリモスカ、ヴィオレトカを演じたアナ・ストヤノスカが登壇。撮影時の秘話や作品に込めたメッセージ等の話が聞けました。作品中では無垢な少女が急激に成長する様を鮮烈に演じていたサラ・クリモスカの美しさに息を呑みました。

よね