劇場公開日 2023年10月13日

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「森と湖と職人と、二人の妻に助けられた幸せな建築家」アアルト kumiko21さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5森と湖と職人と、二人の妻に助けられた幸せな建築家

2023年11月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 もともと北欧の家具、ファブリックは大好き。映画見たらアルテックのお店に行って何か買いたくなってしまうかなあと思ったけど、そんなことはなかった。なぜかというと、全編通じてこの「夫」である建築家の生き方が典型的な20世紀の男だったから。自然と調和する独自のデザイン精神を発揮し、ナチスの攻勢からも祖国を思い残り続けた若き日の武勇伝をリスペクトする。でも子育て・奥さんの病状には無関心で自分の奔放な情動を隠しもしな
い甘え。幼き頃に母君を亡くしたゆえのマザコンなのかわからないけど、引き際という概念もなさそうだった晩年の生き様とともに共感できなかった。まあ、そこが人間臭くて魅力なのですが。とはいえ、フィンランドの風景と空気感に見事に調和した物言わぬ建築と家具たちの雄大で美的センス溢れた長回しのカットは他に類はなく、見て損はない映画だと思います。

Kumiko21