劇場公開日 2022年11月11日

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「生き延びるために紡いだものは?」ペルシャン・レッスン 戦場の教室 バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5生き延びるために紡いだものは?

2023年1月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

見事な物語です。それはそれは見事なラストに結実していく素晴らしいドラマでした。
イタリア人兄弟捕虜が絡むエピソードだけはちょっと首を捻ってしまいましたが、それ以外には文句のつけようがなかったですね。

ホロコーストを題材にした作品は多くありますが、その中でもかなり異色な作品ではないでしょうか?短編小説に着想し作られ、「実話に基づく」とクレジットされていますが、実話部分をパッチワーク的に使っているんじゃないかなぁ?って思います、あくまで想像ですが。お話はなかなかの奇抜さを見せてくれます。奇抜ではあるものの、「あぁ、あるかもなぁ」って気分になってどんどん引き込まれていくんです、不思議ですが。
「嘘だろう!」って言いたくなるような物語なんですが、ホロコーストの日常、ナチスドイツ軍の日常が妙に人間臭く、リアリティがあることとサスペンスタッチで展開することが相まって引き込まれちゃったのかもしれません。綿密な取材も重ねたようですしね。

主人公はもちろん余裕がありませんから自分が生き抜くために必死です。死に物狂いで生を見出します。ですが、彼が最終的に行き着いた心情が一体なんだったのか?彼が生き抜くために紡いできたものはなんだったのか?そして「紡いできたそれら」が最後にもたらすものはなんだったのか?ラストを見て、そこに大きな大きな制作側のメッセージがあるように思えてしかたないのです。

人が居たから、生きていたからこそ歴史は作られ、紡がれ、継がれていくのだと。決して無かったことにもできないのです。背負っていくものなのです。爽やかな感じもありつつ、重い、それは重い問いかけをしてくれる作品だと思います。

バリカタ