劇場公開日 2022年11月11日

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「2840の名前」ペルシャン・レッスン 戦場の教室 MARさんの映画レビュー(感想・評価)

4.02840の名前

2022年11月26日
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悲しい

怖い

ナチスによるユダヤ人強制移送の中、自身をペルシャ人だと偽りテヘランに店を出すことを夢見る元料理人の大尉の管理下となる男の物語。

その場しのぎの嘘が功を奏し、銃殺を逃れたジル。だが、それで大尉に授業をする羽目になり、ありもしない単語を次々とペルシャ語としてでっち上げていく。

終始、生きることに執念を燃やす男の姿に心を掴まれる展開。

目に留まる物モノすべてに、ルト、バラ、ガンク、そしてラージ・・・等々、適当な呼び名を充てて、あたかもそれが本当のペルシャ語かのように大尉に教えていく。

しかしそれは当然、自分自身も同じように作り出した言葉を覚えていかなければならないことを意味し・・・過酷だ。嘘だとバレたら・・・考えるだけでも恐ろしいですね。

そんなヒヤヒヤ展開が繰り返される中で様々な問題が巻き起こる。
イタリア人兄弟の流れはやるせない。まぁでも、一番の被害者は英国空軍の彼かな。理不尽すぎる・・・。やはりナチスと収容所関係の映画は何作品観ても辛いですね。

殺されてしまったユダヤ人の方々は勿論の事。あとは、ナチスに同情の余地はないが、それは置いておいて勉強熱心なコッホも流石に不憫・・・というか、哀れという言葉の方が合うかな。

事実を基にした作品とのことで、どこまでが実際にあったことなのかはわかりませんが、何千もの嘘の単語をどうやって覚えておくんだよ、と思ったら・・・ほほう。これでもやや無理があるような気もしますが、それをラストに繋いで行く流れには心がググっと握りしめられるような感覚を覚えた。

そして途中いきなり、「大きい」「小さい」の話が出てきてかなり戸惑ったw作品イメージが・・・。
コッホもよく所長に直に言えたもんだw・・・ってゆうか、このあたりのくだりってストーリーに必要だったかな。。

総じて良作でした。思うのだけれど、キノシネマさん、願わくば新宿渋谷あたりにも出来てくれないかな。。ホント良作揃いなのですが、立川やみなとみらいはちょっと遠いよ~><。

勿論ワタクシ、銃を突き付けられたような経験は無いわけですが、仮に同じような展開になったとして、そこまでして生きようと必死になれるかな・・・。

ほぼ死ぬに決まった運命に抗う人間の、限りなき生への渇望に圧倒された作品だった。

MAR