劇場公開日 2022年10月28日

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「永久保存されるべき伝説のデュオライブ」ソングス・フォー・ドレラ 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0永久保存されるべき伝説のデュオライブ

2022年10月31日
PCから投稿

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのルー・リードとジョン・ケイルが、恩師ともいえるアンディ・ウォーホルの追悼のために行ったライブをまるまるそのまま収録したコンサートドキュメンタリーで、演目は先んじてリリースされていた追悼アルバムを曲順通りに演奏するというもの。

確執もあったルー・リードとジョン・ケイルだが、アルバムでもこのライブでも演奏するのは2人だけ。がっつりと向き合い、研ぎ澄まされた一音一音を奏で合う緊張感は、観ている側も呼吸するのを忘れるほどの密度。日本で初公開された後に発売されたソフトでは歌詞の字幕がなくなってしまい、アンディ・ウォーホルという人物の半ば架空の伝記というアルバム及びライブのコンセプトが(英語が達者でない者には)伝わりづらくなっていた。

歌詞と音楽、演奏と物語とが非常に密接なライブなので、歌詞の字幕が復活したリバイバル上映には感謝しかない。特にこの時期のリードは何度目かの全盛期と呼ぶべき乗りに乗っていた頃で、このパフォーマンスも文化遺産として永久保存されるべき。ルー・リード自身も手応えがあったのだろう。ジョン・ケイルとの和解は、そのままヴェルヴェッツの再結成ツアーにも繋がった。正直、ヴェルヴェッツ再結成よりもこっちの方が価値があったかも知れないとさえ思う。

村山章