劇場公開日 2023年1月6日

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ファミリアのレビュー・感想・評価

全80件中、1~20件目を表示

3.5多様な出演者陣と巧みに呼吸を合わせてシーンを成立させる役所広司の凄さ

2023年1月31日
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”家族”とは社会の最小単位だとよく言われるが、本作にはそのタイトルが象徴する通り多種多様な家族が登場する。血の繋がった父子、夫婦になろうとしている国籍や肌の色の違う男女、ブラジルからやってきて生き抜こうとする若者、かつて養護施設で育った大人たち、さらにはヤクザや半グレ連中もそれはある意味で家族。そして登場人物の誰もがそれぞれ”愛する者の不在”という心の傷を抱えており、喪った心の欠片を埋め合わせるかのように主人公の陶芸家とブラジル人の若者とが結びついていく過程は静かな見応えを生む。役所広司の役柄は口数こそ少ないが、体に染み付いた陶芸家としての所作の一つ一つが生き様を謳っている。また彼はタイプの異なる俳優たちを繋ぐ結節点のような存在でもあり、名優たちとのシーンはもちろんだが、オーディションで選ばれたブラジル系の若者たちとも絶妙に呼吸を合わせシーンを成立させている点が彼の凄さなのだと思い知った。

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牛津厚信

4.0日本の新しい現実

2023年1月31日
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鑑賞方法:映画館

日本に暮らす在日ブラジル人たちの現実を描く作品。日本はすでに移民大国であり、地方ではこの映画に描かれるような場所は確実に増えている。もはや、彼らのような存在は日本社会を構成する上で不可欠な存在になっているが、インビジブルな状態に置かれ、差別もある。
本作が貴重なのは、こうした現実を、実際の当事者たちを起用して描いた点だ。主要キャストには演技初挑戦の在日ブラジル人たちが多数参加していて、当事者だから表現できるリアリティを持ち込んでいる。エピソードにも彼らの経験が反映されているようだ。
物語は、彼ら在日ブラジル人たちが巻き込まれるトラブルと、息子夫婦に訪れる悲劇を同時に描く。遠いアルジェリアで難民女性と結婚した主人公の息子は、異国の地でテロに巻き込まれる。国外でも国内でも、日本人は外国人とつながりを持って生きているし、世界に起きている出来事は決して無関係ではない。世界の大きな変化の流れの中に、確実に日本もかかわっているのだと実感させる良作だ。

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杉本穂高

4.5この題材を取り上げたのは高評価。要素過多が惜しい

2023年1月30日
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鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

“瀬戸物”で知られる愛知県瀬戸市で代々窯業に従事していた家に生まれ育った脚本家・いながききよたかは、①斜陽化する地場産業、②瀬戸市に隣接する豊田市にある保見団地に出稼ぎで多く住むようになったブラジル人コミュニティーと地域の人々との衝突(高校生だった1990年代によく騒動が起きていたという)、③2013年にアルジェリアの天然ガス精製プラントにアルカイダ系武装勢力が立てこもり日本人を含む職員らを人質にした事件、といった実際の出来事に基づく3つの要素を1本のシナリオに盛り込んだ。

技能実習制度下の搾取的な労働環境から逃げ出したベトナム人女性たちの苦難を描いた藤元明緒監督作「海辺の彼女たち」(2021)、在日クルド人の女子高生とその家族が難民申請を認められず在留資格を失ってしまう川和田恵真監督・嵐莉菜主演作「マイスモールランド」(2022)など、日本で暮らす外国人の生きづらさを題材にした秀作は近年増えてきたが、この「ファミリア」もそうした系譜に連なる。北アフリカの地で外国人が現地の人間から理不尽な暴力を受けるという点で、やはり役所広司が出演した「バベル」(2006)を想起させるが、役所が演じる陶器職人とブラジル人青年マルコスとの関係性は、「グラン・トリノ」(2008)でクリント・イーストウッドが演じた元自動車組立工と隣家のモン族の少年の関係に近い。

俳優たちの演技、成島出監督の演出も決して悪くないのだが、それぞれに根深くて重い題材を3つも盛り込んだことで、各トピックの掘り下げが不十分になり、トピックどうしの有機的な連動性も弱いのが惜しい。団地のブラジル人コミュニティーと周辺住民との関係は、メインストリームのメディアで滅多に扱われない題材であることからも、この要素にもっとフォーカスしたストーリー構成だったらなお良かったのにと思う。

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高森 郁哉

3.5豪華キャストと重厚な題材に期待が膨らむも、まとまりのないストーリーが残念

2024年5月4日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

役所広司、佐藤浩市、吉沢亮という豪華俳優陣共演、さらに移民やテロといった重厚な題材を扱った映画。期待に胸を膨らませて鑑賞したものの、残念ながらストーリーが支離滅裂で、何を伝えたいのか分からず、終始モヤモヤが残る作品でした。

血の繋がりのない家族の絆、命の尊さ、文化の違いによる葛藤など、描こうとしているテーマは非常に興味深いですが、話が散漫で、それぞれの要素が中途半端に終わってしまっている印象です。マルコスの過去やテロ事件との関わりも十分に掘り下げられておらず、観客を置いてけぼりにしているように感じました。

それでも、血の繋がりを超えた家族の絆や、命の尊さといった普遍的なテーマは心に響きました。

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MiMa

4.0繋がり

2024年1月18日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

思わぬ異国の若者との繋がり。
最愛の家族を失い、
人生の最後に何ができるか、
その方法が正しいとも思えないが、
思わぬ繋がらりから始まる新たなストーリー。
その物語には血の繋がりを超える幸せな物語であって欲しい。

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上みちる

4.0許されざる者‼️

2023年12月29日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

悲しい

怖い

これは日本版「グラン・トリノ」やりたかったんでしょうね‼️まぁ、今の日本でイーストウッドに匹敵する演技力があるのは役所広司さんくらいでしょう‼️10年くらい前に同じくイーストウッド監督の名作「許されざる者」の日本リメイク版がありましたけど、その時の主演俳優はひどかったですから‼️役所さん扮する神谷誠治は早くに妻を亡くし、陶芸家として頑張っている。息子の学は海外のエンジニアとして働いているが、そんな学が妻ナディアを連れて帰郷、自分も陶芸家として働くと誠治に告げる。陶芸家では食っていけんと反対する誠治だったが、内心は嬉しい。一方、ふとしたことから在日ブラジル人の青年マルコスと仲良くなった誠治は、彼らが半グレ集団とトラぶっていることを知る・・・。息子とのエピソードもマルコスとのエピソードもイマイチ掘り下げ不足で何を描きたいのか分からないとのレビューが多々ありましたが、多分描きたかったのは神谷誠治というキャラクターそのものなんじゃないでしょうか⁉️佐藤浩市さん扮する友人の刑事ともども孤児院で育ち、親の愛情も知らないまま一人の女性と結婚、学を授かるも、イマイチ愛嬌表現がうまく出来ない‼️でも学はそんな父親を理解している‼️そして学夫婦が誠治と暮らしたいと言ってくれた矢先の悲劇‼️そんな時、家族ともども親交を深めていたマルコスの危機‼️これ以上大切な人を失いたくない‼️そしてラスト、半グレ集団のボスのナイフが・・・‼️学を失ったことで、マルコスが自分の息子のように思えたということでしょうか⁉️まぁ、マルコスとのエピソードも掘り下げ不足なので、ラストの誠治の行動もそこまでするか?と、腑に落ちないところがあるのですが、まぁ誠治は助かったからいいでしょう‼️これがイーストウッドよろしく、自分の命まで犠牲にしてたら、バカなの?と思ってしまう‼️助かった誠治は初のブラジル人陶芸家マルコスの師匠として、あとチョットは幸せに暮らすんでしょう‼️メデタシ、メデタシ‼️

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活動写真愛好家

2.5支離滅裂な感

2023年12月21日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

観ていて、「これは何を描きたいのだろう?」と思ってしまう映画だった。

陶器職人の親父(役所広司)とその息子&嫁さんのドラマかと思ったら、ブラジル人とブラジル人を憎むワルたちとの対立を描き、更にブラジル人たちと役所広司が知り合いになって……という「なんだかな?映画」であった。

役所広司と佐藤浩市が幼なじみとして会話するシーンは、なかなかいい感じだった。

ラストを観ると「こういうオチを描きたかったのか…」と思うが、全体的に支離滅裂な感は否めない。
役所広司は好演していたが、物語展開が微妙な映画だった。

<映倫No.122427>

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たいちぃ

3.0憎しみや暴力の連鎖を断ち切る

2023年8月28日
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鑑賞方法:VOD

重厚で面白かった。
在日ブラジル人と日本人の在り方がテーマかと思ったら舞台はアルジェリアのテロまで話が行き、どこまで話が大きくなるのかと思ったら、
そこはやはりだタイトルでもある家族とは?と言う所に終始して綺麗に収まっていたと思う。

最近は日本でもブレイキングダウンが流行って、
どっちがケンカ強いか?みたいなのに憧れる若い人が多いのを憂いてたけど、
非暴力で暴力や憎しみ悲しみを断ち切る姿に感動しました。

しかし、絵力目力は役所広司が一番強く、怖かった。
在日ブラジル人の方々もリアリティーがあり、
吉沢亮さんは見る度にイケメン枠を軽く飛び越えた
熱量ある演技が素晴らしかった。

子どもが生まれて人生最大の喜びの報告が
人生最悪の報告になる演出がとても良かった。

移民問題は今リアルな日本の問題としてあるので
良いタイミングで見れたなと思います。

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奥嶋ひろまさ

4.0タイトルなし

2023年8月16日
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鑑賞方法:VOD

亮くんは、一点の曇りもないキラキラした役。それだけに、役所さんの無念の演技が光る。結構、社会的背景を描いた映画。
半グレの頭のおかしいやつの話を延々描いて、映画の中で差別満開とか、構成も古いし、好きじゃない。古い。ヤクザの話にしないと映画にならないのか。
でも、役所の切込みは見事だった。また父子の感情を重層的に織り込んだのもよかった。

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えみり

3.0想像を裏切る作風のギャップ

2023年8月4日
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2023年劇場鑑賞2本目 良作 61点

半年程前から告知や劇場の上映前予告で気になっており、1月公開だったり役所広司主演ということで、2年前のすばらしき世界の再来かと期待していましたが、いざ劇場に足を運ぶと想像と色味が結構違くて意外でした

何と言うか、悪くないんだけど期待していたのじゃないというか、わかりやすく言うとどこか大人しい感じなんだけど、取り込んでいるテーマが多くてどれもぼやけている印象でした

結局言いたいことというのは、国籍も住むところも今いるところが離れていてもみんな繋がっている家族なんだよという寛容な眼差しの役所広司のキャラクター像を中心に伝えてるんだろうけど、、、ん〜〜

役者人の演技は申し分無いと思うし、佐藤浩市に松重豊、吉沢亮にヘルドックス以来のMIYAVIととても豪華だし、製作陣もそれなりに力量込めて作ったんだろうけど、惜しい作品でした

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サスペンス西島

4.0国際紛争と町差別

2023年8月2日
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鑑賞方法:DVD/BD

国を恨んではいけない。人を恨むべき。戦争の根源。やり場のない怒りを持て余す2人の男。息子は守れなかったが、守れる大事な人を、恨みではなく守った。金を渡すのかと思ったがそれでは解決しないよね。息子の意思を受け継いで、マルコスがんばれ。

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いつこ

3.0両論併記

2023年7月2日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

難しい

の体を装ってはいるが、日本側が半グレの時点で移民側に肩入れしている。
それが結果的に本質的な問題点をぼやけさせ、感情的な描写が色濃く出てしまっている。
移民だけでなく、中東や役所の生い立ちまで絡めて複雑にしてしまっているので、
それらを回収し切れていないと感じた。
結果としてあっけないハッピーエンドになり、人権活動家が喜びそうな内容になっている。
個人的には違和感を感じることが多く、家族の描き方としてはモヤモヤが残った。

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みみず

4.0解決の糸口さえ見つからない移民問題

2023年7月1日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

難しい

今(2023年7月1日)、フランスで移民2世の17歳の若者が警察官に射殺されたのをきっかけに、フランス全土で暴動が起きています。移民問題を扱ったフランス映画『レ・ミゼラブル』もぜひ見てください。

この映画「ファミリア」は、日本で暮らす在日ブラジル人たちの現実を描いている視点で鑑賞しました。ブラジルで食べていくのが大変な人々に「日本で3年働けば家が建つ」と誘い、日本へやってきた。来日して働き始めたら、リーマンショックで失業。地方自治体によっては、帰りの航空運賃を出して、希望者はブラジルへ帰国してもらった。日本に残ったブラジル人も非正規の低賃金労働でギリギリの生活を余儀なくされている。
ブラジル人だけでなく、移民・難民は立場が弱く、経済的にも大変なので、集まって助け合わないと生活していけません。移民・難民が集まれば、生活習慣・宗教などの違いから、トラブルが絶えず、もともと住んでいた人は、他の街へ転居していきます。そして、移民・難民の街が国中に点在することになります。
移民問題は、善意・共生・人道などのきれいごとでは、何の解決にもなりません。現在のアメリカ合衆国を見ればわかります。人種が絡む事件が起こるたびに、デモは行われますが、何十年たっても解決の糸口さえ見つかっていません。
日本も移民・難民・研修生などを受け入れ続けている現状からして、他人事と思えなくなってきました。

また、逆の立場となる明治~昭和における日本人のハワイ、北米、南米、満州への移民の歴史も忘れてはいけません。

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eimei

4.0I'm半グレ

2023年6月15日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

監督は『八日目の蟬』『草原の椅子』『脳男』『ソロモンの偽証 前篇・事件 / 後篇・裁判』『グッドバイ〜嘘からはじまる人生喜劇〜』『いのちの停車場』『銀河鉄道の父』の成島出
脚本は『洋菓子店コアンドル』『ニワトリ・スター』のいながきよしたか

早くに妻を亡くし妻の兄夫婦と同居し陶芸で生計を立てている神谷誠治
誠治には一流大学進学一流企業に就職し海外に赴任している自慢の一人息子学がいる
その学が婚約者と一緒にナイジェリアから帰国して来た
学は今の仕事の目処が立てば会社を辞め陶芸の仕事を継ぐつもりだという
儲からない陶芸に誠治は息子の意見に反対する
やがて息子夫婦はナイジェリアに戻るがそんなある日に現地の職場がテロリストに拘束されてしまう

主な撮影場所は愛知県

世の中には外国人差別を真正面から取り上げた意欲作と評価するライターがいるようだがかなりピントがずれている
本当に鑑賞したのだろうか
ブラジル人を執拗に虐める半グレのリーダーは酔っ払い運転のブラジル人のせいで妻と娘を事故で失っている
ブラジルまで追いかけたがすでに死んでいた
行き場のない怒りが愛知県の在日ブラジル人全てに向けている
社会問題として描くにはちょっと違うかな

オーディションで選ばれた外国人の皆さんがわりと思ったより上手だった
素人に毛が生えた程度だと思うが監督の指導の賜物か

配役
陶器職人の神谷誠治に役所広司
誠治の息子でプラントエンジニアとしてナイジェリアで働いている神谷学に吉沢亮
誠治の義理の兄(妻の兄)・金本哲也に中原丈雄
哲也の妻・節子に室井滋
学の婚約者のナディアにアリまらい果
在日ブラジル人の青年マルコスにサガエルカス
マルコスの恋人で在日ブラジル人エリカにワケドファジレ
地元のヤクザ青木に松重豊
ブラジル人を憎む半グレのリーダー榎本海斗にMIYAVI
誠治の親友で駒田隆に佐藤浩市

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野川新栄

4.0ラストでタイトルに込められた意味とはこういうことだったのかと、深く感動したのです。

2023年2月8日
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鑑賞方法:映画館

 本作は、陶器職人の父と海外で活動する実の息子、そして在日ブラジル人が国籍や文化などの様々な違いを超えて一つの「家族」になろうとする姿を描くものです。
 キーマンは在日ブラジル人とも言える本作では、オーディションで出演が決まった演技経験のない在日ブラジル人の若い俳優たちが、フレッシュな演技を披露しています。

 タイトルは「家族」を意味するポルトガル語です。ただその言葉のニュアンスは、英語の“Family”が意味する血縁だけでなく、国境や人種、境遇を超えた関係にまで広がるものです。また家族に加えて、使用人や召使いまで含まれるものだったのです。そこには成島出監督の願いや祈りが、ストレートに示されていると思います。

 誠治(役所広司)は片田舎で小さな窯を持つ、1人暮らしの陶器職人。ある日、息子の学(吉沢亮)が、海外の赴任地から妻ナディア(アリまらい果)と一時帰国きます。大企業のプラントエンジニアとしてアルジェリアで働いていた息子は、紛争で孤児となっていたが、前向きに生きるナディアに惹かれ、現地で結婚したのです。学は会社を辞めて仕事を継ぎたいと言うが、誠治は断ってしまいます。

 一方、隣町の団地に住む在日ブラジル人青年マルコス(サガエルカス)が、日本人の半グレ集団とトラブルを起こし、ブラジル人を憎悪するリーダーの海斗(MIYAVI)に追われていました。ある日マルコスが誠治の元に逃げ込んできたことから、誠治たちは団地のブラジル人パーティーに招かれる。マルコスやその恋人との交流が始まるが、在日ブラジル人と半グレ集団との争いは深刻さを増すのでした…。

 物語の始まり、カメラは団地の上空から側面に沿うように下りていきます。すると朝から働きに向かう在日ブラジル人たちが、迎えの車に乗り込むにぎやかな姿を一気に映し出すのでした。この在日ブラジル人たちが暮らす巨大団地のシーンは、愛知県豊田市の保見団地で撮影されました。実際に保見団地では、周辺の工場などに勤務する日系ブラジル人ら、数千人の外国人が暮らしています。そのせいか、そして日本人から受ける偏見の数々もリアリティあふれる作品となりました。

 高くそびえるコンクリートの団地は、冷たく無機質です。それが、在日ブラジル人たちのかしましい会話、パーティーでの音楽やダンスが加わることで、陽気さや健気さがにじみ出てきて、イメージがガラリと変わるのです。実際の団地で撮影したことが、本物の空気感を伝えてくれました。

 ところで本作では、在日ブラジル人の問題が伏線として描かれています。
 「日本人にもなれない、ブラジル人でもない」と誠治に詰め寄り、胸の内を吐露するマルコス。辛い現実の日本での生活に苦しむ在日ブラジル人の心境を表す言葉が、胸に鋭く突き刺さります。
 愛知県の在日ブラジル人たちは、バブル期に外国人労働者として招き入れられながら、景気が悪くなったとたんに首を切られ、放りだされてしまったのです。いわば日本の身勝手の象徴とも言える人々は、現在まで社会から差別を受けてもいます。そんな彼らを、実際の当事者が演じるかたちで映画に登場させているのです。在日ブラジル人の役は、オーディジョンで演技未経験者が選ばれていたのです。ほとんど映画には素人同然の彼らが、のびのびと自分たちの苦悩と喜びを表現してみせるさまには大いに開放感があるものの、同時にその素直な演技から在日ブラジル人問題の深刻さが伝わってきます。

 主人公とその息子と嫁が織りなすパートと、ブラジル人の若者たちが日本の半グレ集団から執拗な暴力を受けるパートが並行して描かれ、中盤まで別々の映画をザッピングして見ているような違和感を覚えました。
 しかし、二つのパートを結びつける役目も果たす役所はさすがの存在感で、在日外国人コミュニティーの現実に切り込んだ視点が新鮮です。

 後半は暴力がそれぞれの家族を襲い、誠治の怒りが沸点を超えます。仁侠映画さながらの展開の下、悲しみや怒りの中から必死に希望を見いだそうという市井の男を演じる役所は、やはり見事でした。
 とかく内向きでこぢんまりとしがちな日本映画のありようを打破しようとした、作り手の野心がうかがえます。

 ある事件が起こり、家族を失い呆然とうなだける誠治を、暖かく囲むマルコスたちブラジル人たち。たとえ血のつながりはなくとも、新たな家族のはじまりのように見えました。
 ラストで誠治とマルコスが、一緒に窯からの火を見つめ、年長者と若者の信頼感が表出するシーンのところで『ファミリア』という映画のタイトルがふと頭をよぎりました。タイトルに込められた意味とはこういうことかと、深く感動したのです。

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流山の小地蔵

3.0期待し過ぎたかな(*´Д`)

2023年2月4日
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視聴から少し時間が経ちましたが、新年一発目と決め観賞して来ました!

んー、予告の雰囲気で泣けるだろうなと期待のし過ぎでした!
まさに、私自身東海地方在住で、若かりし頃T社関連会社で働き、周りも中国の若い方が大量に派遣された時代でした。
確かに“外国人”として受ける不平等な事・不誠実な事はあると思いますが……中年に片足突っ込んだ私としては、この不平等やなんかは仕様がないんですよね…。
と言うのは、“社会人になれば当たり前だから”なんですよ…

とはいえ、今年も邦画は役所広司、岡田准一で凌ぎそうで嫌気しかなく。

是非、若い方に観て頂きたい作品です!映画館へ

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白長須鯨

3.5申し訳ない。 僕は 半グレ リーダー の味方です。

2023年2月3日
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劇中に関しての B国人 は1から10まで、救いようがないアウトな集団だ。
腐ったこの集団は 自分達のどこが悪いのか 自覚がなく、
やさしい日本人に付け込む 心底腐ったやつらだった。
彼らは日本に来ても同化しようとせず
自国でやっていた以上の悪事を 旅の恥は掻き捨て とばかりに、繰り返す。
彼らは、日本で一生暮らす気もなく、単なる金儲けの 出稼ぎ集団
彼らは けして反省もしないので
団地に住む B国人 は全員、祖国に 自費 で強制送還すべきだ。
さもなくば、我々民間人が、半グレのような自衛団を作り、自分達で 地域・我国を守らねばならない。

いっぽう 似たような映画「マイスモールランド」を、約1年前に観たが、
マイスモールランドでの主演の子と家族は 日本を 出稼ぎの地 と考えず
日本を、そして日本人を好きになり、懸命に同化しようと努力していた。
そのような家族は、日本中で応援したいと思ったが、
2/2早朝でも、似たように N国人 の飲酒無免許での死亡逆走事故があった。
無常を感じる。

本作の制作者・監督は 日本人自衛団を 半グレ≒悪
外国人を善良なる人 と解りやすく 明快に 表現し、映画観賞者を、自分達の考えに誘導しようとしているが。。。
僕は。。。

映画「マイスモールランド」と本作を見比べるべきだと、僕は思った。
本作中の B国人がどれだけ腐っているか理解できる筈だ。

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YAS!

4.0ファジレの演技は良かったが、、、

2023年1月31日
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泣ける

悲しい

後半にいくにつれ衝撃的な内容になり、もう少しハッピーエンドであれば良かったのに!と思わせる少しストレスがはいるくらいの展開が絶妙で良かったと思う。
もっと早く警察が取り締まれないものか?とか色々と思う所はありましたが、それはそれで映画の世界と言う事でいいでしょう。

一つだけ、「メイドインジャパン」という日本で暮らす外国人が日本製のお土産を持って祖国に帰るバラエティー番組にでていたエリカ役のファジレさん、キレイで素晴らしい演技、難しい役を見事に演じきっていましたが、屋上でのあのラブシーンは必要だったのかな?終わってから毛布に二人くるまり語り合うシーンもきちんと胸を隠しても良かったような、、、とブラジルにいる厳格なイスラム教のお父さんが声をあらげて言ってそうで少し心配です。(笑)

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シェンシェン大佐

4.0日本における社会問題とテロの恐怖

2023年1月31日
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鑑賞方法:映画館

地元の近く、豊田市にあるブラジル移民団地がモデルで撮影してたとは。
もっと地元のローカル局が広報すべき映画だと思ったが、今はキムタク信長、松潤家康一色にわいてるから仕方ないかな。
やっぱり役所広司迫力があります、他の役者さんも渋い演技で締まった映画。
エピソードが悲し過ぎるが人と人の絆、家族の絆によって絶望も希望も紙一重。
それでも残されて生きて行く人々はつながりを大切に生きていく。

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梅じんの相棒

3.0ひとことReview!

2023年1月31日
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悲しい

怖い

知的

社会や政治問題を盛り込み過ぎて、何を焦点にしているのか曖昧になってしまった感じ。「家族」というテーマにもっと重きを置いたら良かったのでは?

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極東新天地