劇場公開日 2022年11月18日

「伝記的、架空の実話??」バルド、偽りの記録と一握りの真実 万年 東一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0伝記的、架空の実話??

2022年11月30日
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鑑賞方法:映画館

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怒涛の二年連続オスカー獲得からイニャリトゥの新作はNetflixで長編映画監督デビュー作『アモーレス・ペロス』以来のメキシコを舞台に自伝的内容の物語?にしては戸惑う描写の連続で序盤から呆気に取られてしまう。

幼少期に焦点を当てた『リアリティのダンス』から監督自身の自伝的内容の続編でもある『エンドレス・ポエトリー』を撮ったアレハンドロ・ホドロフスキーに近いものを感じながら『ホーリー・マウンテン』のラストを想起させられる場面も、イニャリトゥはホドロフスキーの領域に突入してしまった、確かにフェデリコ・フェリーニの『81/2』を観た時の感覚を、テリー・ギリアムの要素も感じながら、同郷でもあるアルフォンソ・キュアロンがNetflixで撮った『ROMA/ローマ』も監督自身の半自伝的内容であり、イニャリトゥの作品で他の監督や作品をイメージするのが初めてのような気もする本作。

現実からの非現実、夢の世界と混乱させられる展開に映像の優雅さが素晴らしく、軸になる物語が破綻しているようで難解に思われながらも理解出来る伏線回収を丁寧に描けているけれど不思議な感覚は拭えない。

メキシコの民族音楽が流れる中で皆が踊るシーン、主人公の顔がアップになり音楽が途切れ唐突にアカペラで流れるデヴィッド・ボウイの「Let's Dance」が印象的で度肝を抜かれた。

万年 東一