劇場公開日 2023年2月17日

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「俳優も雰囲気も悪くないのに、色々と残念」ボーンズ アンド オール りらさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5俳優も雰囲気も悪くないのに、色々と残念

2023年5月5日
iPhoneアプリから投稿

原作既読した者としての感想。
予告編の絵面や雰囲気、俳優は、原作の魅力をいい感じで体現してくれていそうだと期待したんだけど。観終わって残ったのは残念感のほうが強かった…
普通の人間の中に、なぜか生まれてしまうイーター=人喰いという忌まわしい存在。その人喰いである少女マレンが主人公だけれど、本作は、マレンと、同じく人喰いの少年の恋を中心に描いたが故に、恋愛ものとしてもホラー?としてもどっちつかずになったように思う。
原作は、マレンが人喰いであるため実の母(映画ではなぜか父に変換されてる)にも疎まれて見捨てられ、ひとりで生きていかざるを得なくなる。その設定は映画でも変わらないが、何が違うといって、マレンが人を食べるのは、自分に対し好意や愛情を寄せてくれて、かつ、自分もその人に惹かれた相手に限られる、という重要な設定が映画では失われている。つまり、自分が誰かを好きになればきっと人喰いの衝動を抑えきれず殺してしまうから、マレンは人と親密な関係が築けない。この上ない孤独を抱えてしか生きられない少女なのだ。
その彼女が、人喰いの少年と出会って惹かれあい、いったんは別れてもまた二人でいることを選んだ時に起きる出来事が、マレンの生き方を定める。つまり原作は恋物語ではなく、マレンの辛い成長と自立の物語なわけで。美しくも哀しく、恐ろしい捕食者として歩き出すマレンを、映画でも描いてほしかったなあ。そうすれば、少年リーを演じるティモシー・シャラメの繊細な美貌は、マレンへの供物としていっそう輝いただろうに。
原作と映画は別もの、とわかってはいても、やっぱり残念なものは残念だし、たとえ違うものになるとしても、違う魅力を見せてほしいと思うのですよ。

りら