ノベンバーのレビュー・感想・評価
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あらゆる対比が映像美で描かれる
冬の色の少ない世界を、モノクロで描くことによってさらに、映像の美しさ、陰と陽のコントラストが際立つ。
モノクロの映画はやや眠くなりがちで、この作品も途中、人間、動物、神、悪魔などが入り混じってよくわからなくなり、眠気が。。
ただ、クライマックスへの展開と映像の美しさには目を見張るものがある。まさに、息をのむ美しさ。
テーマとしても、いろいろな神、貧富、恋愛が複雑に絡みあって、カオスというより、独特の世界観が成り立っていた。
白と黒、信仰とお金と恋愛、欲と命、対比が際立つ作品だった。
2023年劇場鑑賞41本目
豚の解体が好きだ
兎に角、"盗む"が徹頭徹尾続くストーリーである 決してエストニアという国の特性ではなく、環境、若しくは前時代的発想ではそれがスタンダードだったのだろうとは想像出来るし、それを咎めようとは思わない 自分だってその時代に生まれれば同じ事を当然のようにやると思う
と同時に、ファンタジーが溢れているストーリーということは何かのメタファーとも取れる作品であり、寓話、もっと言えば絵本的構成になっている今作品に強烈に惹き引せられる理由が存分に理解出来る 最後はシェークスピア的に悲劇で終わるけど、そこまでの物語も悲恋として心に突き刺さる内容である
”希望を”一切除外した作品、あっぱれである あっぱれと言えば、自然に人間に有らざるモノをここまで自然に溶け込ませている点、ここまでの作品は他に無いと感嘆させる
土着信仰的おとぎ話の世界観と詩的な映像
事前情報をあまり入れずに観ました。
アート映画といわれるジャンルのようです。
自身の感性で観ることをおすすめします。
人ならざるものが当たり前にある不思議な世界観。
幻想・ファンタジーというよりも、妖怪やつくも神といったものが思い浮かびました。土着信仰的おとぎ話や神話のエピソードのようです。
モノクロ映像ですが質感が生々しく感じられます。そして白がほんとうに美しい。
村人たちの滑稽で醜悪な恋模様との対比で、主人公と彼の純粋な恋心がいっそう清く美しく際立っています。
意味が分からない描写もありましたが、それが神秘的にも感じられるような面白く美しい作品でした。
途中、登場人物が詩をよむシーンで、この映画って詩的だなと思いました。
詩的な映像と感じたけれど、なにがどうと言葉で表現できる気がしません。感性に触れられたという気がします。
エストニアでベストセラーの小説が原作だそうですが、元はどのように言語化されているのかまったく想像できません。
エストニアの「お盆」のお話。静謐な美しいモノクロームの映像、神と悪魔が日常的に存在する土俗的な世界観等々、一見所謂難解な映画のようだけど、本質はコメディ(単に喜劇という意味ではなく)だと思う。
①日本のお盆と同じ様に(かどうか分からんけど…今までお盆に帰ってきた死者に会ったことないから)帰ってくる死者、悪魔に貰った魂が入っている動く農道具や話す雪だるまのクラッツ、美女や山羊・豚の姿で訪れる疫病、魔女、狼に憑依できる娘等々、エストニアの寒村を舞台にした土俗的かつ幻想的・お伽噺的な世界の中で、恋(愛というより恋だな)の一途さと儚さ・人間の欲深さ/罪深さ/狡さ/愚かさ/いい加減さ/どうしようもなさ/馬鹿らしさ/可笑しさを描き出した「悲劇」の反対に位置する意味での「喜劇」だと思う。
そう思うとなかなか癖になりそうな映画である。
②大概のヨーロッパ映画では、キリスト教に触れることを避けて通れないが、国毎にキリスト教が流布する前の土俗的な信仰が透けて見えるのも興味深い。(日本でも仏教が流布したり神道として整理される前の土俗信仰が未だに各地方に残っているし)
ホラーでダークな純愛物語
モノクロでシリアスで暗く難解、幻想的…
眠くなります…
『ヴァージニア』と似てるけど、コッチの方が、よりシリアスで暗い(笑)
十字路、悪魔、魔女…
幻想的なホラー世界で、物語の芯には一途な純愛が貫いている感じかな?
ホラーコーティングされたダークな純愛物語。
タル・ベーラ meets シュヴァンクマイエル。リトアニア発、中世的幻想とゴチック的ロマンあふれる傑作!
観る前から僕の大好物らしいのはよくわかっていながら、なんとなく観そびれていたのだが、封切りから2カ月近く経つのに、まだ終映もせず、劇場でやっている。この際せっかくだから観ておこうかと足を運んだら、まだ半分くらいお客さんが入ってるじゃないか! ちょっと感動した。
アヴァンタイトルの映像から、鷲づかみにされた。
水辺と狼。なんかタルコフスキーみたい。
と思ったら、カメラが引くと、じつは雪景色だとわかる。
雪を転がる狼と、眠る少女の並行モンタージュ。
白トビした、きわめて美しい幻想的な映像だ。
一転して、納屋の前で奇妙な骨と農具のオブジェのようなものが動いている。
最初、画面外で誰かが引っ張っているのかと思ったら、なんか自律歩行しているらしい!
三本脚で、タンブルウィード(回転草)のように。悪魔ブエルのように。
おおお、シュヴァンクマイエルじゃないか!!!
この自動歩行機械が、納屋に入っていく。
怯える牛たち。『LAMB/ラム』みたい。
殺すと思うでしょ? ところが違う。盗むのだ。
いきなり忍者映画の鎖鎌みたいに飛び出す捕縛鎖!
抵抗しながら、引きずられてゆく牛……って、なにいいい?? 飛んだ???
なんと、この自動歩行機械、こんどはタケコプターみたいに回転して、
牛を連れて飛翔しちゃうのだ!! プルプルプル!
ヤコペッティの『さらばアフリカ』みたいに、牛が飛んで行く。
牛目線で見降ろされる大地。ああ、またタルコフスキーみたいだ……。
美しくて、奇妙。神話的で、寓話的で、世俗的で、残酷だけどユーモラス。
数秒先に、何が起こるのかが、さっぱり予見できない。
意外な転調を繰り返し、ジャンル感も定まらない。
でも、これから始まる世界観と物語への期待はいや増しに高まる。
すごいアヴァンタイトルだと思う。
これだけで、監督とスタッフの力量がガツンと伝わる。
名刺代わりといったところか。
このあとの展開も、せいぜい頭がおかしい。
せっかく牛を盗んできてくれた「悪魔クラット」と呼ばれるこの奇怪な便利ロボットの使い魔に、農夫は禅問答のような命令を伝えて、混乱したクラットは頭から火を噴いて自爆してしまうのだ。で、それを見たヒロインのリーナは、「きれい、クリスマスツリーみたい」とうっとり……って、なんなんだ、このオフビートなノリは??
ここで描かれる農村は歪んでいる。出てくる農民たちも歪んでいる。
でも、それはなぜかとても美しくて、とてもいとおしい。
本編が始まっても、その豊穣な「中世の闇」の香りには、ただくらくらさせられるばかりだ。
このあいだまで同じイメージフォーラムでやっていた、チェコのフランチシェク・ヴラーチル監督の『マルケータ・ラザロヴァー』を彷彿させる世界観だが、ひたすら殺伐としているうえにナラティヴの異様にわかりにくかったあの作品と比べれば、寓話のような恋物語が中核にあって観やすいし、コミカルな演出も多いし、何より「悪魔クラット」というとっておきのキラーアイテムがある。
タル・ベーラ、タルコフスキー、パラジャーノフ、ベルイマン、ドライヤーあたりの影響を色濃く感じさせる、深みのあるアーティスティックなモノクロ映像に、テリー・ギリアムの『ジャバーウォッキー』やシュヴァンクマイエルのようなストップモーションのギミックがかけ合わされて、独特のアニミズムに支配された中世的世界が生み出されている。
11月になると死者が蘇り、生者とテーブルを囲み、サウナに一緒に入る世界。
農民が悪魔を呼び出して契約し、その結果生み出された使い魔が徘徊する世界。
疫病が人や動物の姿を借りて村に侵入して、村人とのコンゲームを繰り広げる世界。
舞台は19世紀というが、展開されているのはあやまたず「幻想の中世」とでもいうべきものだ。
下ネタ満載の部分も含めて、『神々のたそがれ』や『異端の鳥』と同種の、ヒエロニムス・ボス的な中世世界の再現をもくろむ映画だといっていいだろう。
上で挙げた作品群では比較的希薄だが、この作品では顕著に観られるのが、「愛と性」の要素だ。
物語からは、いわゆる19世紀「ゴチック小説」の二本の柱というべき、「恐怖」と「恋愛」が、抑圧された「性」の問題と合わせて、濃密に感じとることができるのだ。
ヒロインは狼に変身(もしくは憑依)して、夜な夜な白銀の平原を疾駆し、身体のほてりをしずめる。一方、深窓の令嬢は、夢遊病で毎夜徘徊し、うろうろと屋根にあがって、落ちかけては誰かに助けれられている。「狼化」は『キャット・ピープル』や『獣は月夜に夢を見る』と同様に、成熟した女性の抑えがたい性的興奮が獣性に仮託されたものと捉えるべきだし、「夢遊病」もまたゴチック的文脈ではたいてい女性と結びつけられて、性的な抑圧と関連付けられることの多い主題だ。
監督は、ブリューゲルやホガースの絵画作品に登場するような欲深い農民たちの、非キリスト教的な土俗世界――死者と悪魔と便利ロボの闊歩する世界を、面白おかしく描写する一方で、片思いの連鎖する「悲恋」物語を、残酷童話とでもいうべき救いのないタッチで語ってゆく。
お話自体は、ちょっと想い人のハンスがアホの子すぎるし、ヒロインのリーナもたいがい自分勝手なので、いらっとさせられる部分もあるが、恋愛ものとしてちゃんと成立しているし、ノリとしても、笑いとシリアス、静謐な風景描写と暴力的なアクションの取り合わせが絶妙だ。
個人的には、女性の姿で疫病が村の境界(川)を渡り、山羊や豚に姿を変えて潜入してくる(それを農民たちが悪知恵でやり過ごす)あたりが大好き。あれ、わざわざ農民に声をかけて渡河させてもらうのって、「吸血鬼は招かれないと境界線を越えられない」って話の延長だよね?
まさに『赤死病の仮面』だが、動物の姿で犠牲者を嗅ぎまわるあたりは、動物媒介病としての黒死病の現実ともリンクしてるし、『すずめの戸締まり』のダイジンじゃないけど、古来厄災は動物の姿を借りて現れるものであり、フォークロアの再現としてとても説得力がある。
それと、やはり撮影(マルト・タニエル)の素晴らしさが、作品の価値を何倍にも高めている。
令嬢がベッドで眠るシーンがフューズリの『夢魔』やティツィアーノ(ダナエ、ヴィーナスなど)を思わせるなど、絵画史的引用も豊富。総じて、画面の隅々まで撮り方と演出に「意図」が満ちていて、緊張感がとぎれない。ラストのなんとなく『シェイプ・オブ・ウォーター』風の映像も、一見して忘れがたい幻想的な光景を現出していた。
あとね、もうとにかく、使い魔のクラットたちがバリバリ可愛いんですよ!!
不器用だけど、献身的で、一生懸命で、でも人や動物とは異質の価値観で動いていて……。
とくに、詩人としてハンスに恋の何たるかを伝授する雪だるまクラットの最期とか、ちょっとぐっとくるものが。シラノみたいな(笑)。
エストニアという国は、決して映画製作が盛んだとはいいがたいらしい。
そんな地域から、これだけの完成度の中世的な幻想ゴチック映画が出てくるというのは、ちょっと破格の出来事といっていいのでは。
久しぶりに、BDが出たら買いたい作品に出逢った気がする。
ダークなファンタジーの傑作
19世紀のエストニア。
このときドイツの支配下か。
いきなり生物ではない『物』が意思を持っているかの如く動き回る。“すべてのものには霊が宿る”というアニミズムの思想を映像化したのだろうが、何故か無性に恐かった。
さらには亡き先祖が甦る「死者の日」。
多くの死者が甦り各々の家に帰って行った。
そう、意識の中にある非現実的な事象を映像で具現化していく。美しいモノクロ映像と相まって観る我々のイマジネーションを刺激する。
縦糸となるのは二つの実らぬ恋心。
こちらは対照的に生身の人間の温もりを感じるリアリズム。報われないのに追いかけてしまうのも人間の摂理。悲劇に向かって突き進んだ。
古きエストニアの寒村での生活は窃盗と使い魔とともに... 狡猾さが至上命題の人間関係の中に在って一途な恋が美しくも残酷に雪原を木魂する幻想的モノクロ映画!!
19世紀のエストニアのとある貧しい寒村を舞台に、隣人間での窃盗が常態化した卑俗な処世術と若い男女の一方通行の悲恋のコントラストを鮮やかに描きつつ、死者や悪魔あるいは使い魔までビジュアルとして共存する幻想的なモノクロ映画。人間の美醜をシンプルなラブストーリーに集約させた構成はお伽噺的であり、峻厳な自然と陰影の深いキャラクターの相貌が浮世離れした世界観をより際立たせています。
人間が召し使いのように使役する使い魔クラットに、贄と交換でそのクラットを提供してくれる悪魔、11月1日の万礼節に現世に舞い戻る死者たち、そして果ては疫病まで人間ないしそれに準じた姿を伴って画面に現れます。一般的な邦画洋画であればそうした人ならざる存在の具体化は作品をチープ化させてしまうことも多いですが、本作ではそれらが違和感をもたらすどころか作品全体の異界感を見事に醸し出しており、それでいて互いにこすっからい騙し合いに終始しているところが滑稽でありブラックユーモアとも言えるでしょう。
それゆえに人間同士だけでなく悪魔や疾病とも騙し合う究極のコンゲーム映画でもあるのですが、モノクロの静謐な画面と瀟洒な演出が相俟って脂っこさは皆無な不思議な味わいでした。
19世紀のエストニア。 翌日11月を迎えるその日は、死者を迎える日...
19世紀のエストニア。
翌日11月を迎えるその日は、死者を迎える日。
死んだ者たちが蘇って、飲んだり食ったりした上にサウナに入るのだ。
しかし、死んだ者たちの本当の姿は、大きな鶏。
サウナいっぱいの大きさなのだ・・・
といったところからはじまる物語で、魔術や精霊、人狼などが徘徊する世界の物語。
物語の中心は、農夫の娘リーナ。
彼女が思いを寄せる青年ハンスはドイツ人男爵の娘に恋焦がれている。
が、リーナの思いも、ハンスの思いも一方通行、相手は振り返らない・・・
と、大筋はラブロマンス。
なれど、全編を覆う禍々しさは傑出しており、ダレ場であるサイドストーリーすら息が抜けない。
この緊張と緊張と緊張がこの映画の良さなのだが、あまりに緊張しすぎて卒倒しそう。
冒頭から登場する、農機具などを組み合わせて魂を吹き込んだ使い魔クラットなどは、描き方によってはコミックリリーフになると思うのだけれど・・・
結末は・・・悲恋。
オフィーリアの最期を思わすような悲恋の物語。
もう一度観ると、可笑しいシーンで笑えるようになっているかもしれません。
評価が難しい。音楽がもっと良いのを使っていたならと思う。
この映画の紹介文を読んだら、なんと私がかねてから夢想している創作小説の世界と全く同一ではないか。舞台が日本からエストニアに変わっただけなのである。世の中には私を同じことを考えている人がいるとは思ってもいなかった。
東京だけの上映で落胆していたら、名古屋の今池シネマテークで上映されると知り、早速駆けつけた。
この手の映画に合理性を求めるのは間違っている。己の感性で映像や演技で見ていくしかない。
想像どおりだった場面や期待外れの場面もあって、本当に評価がしにくい。美しい映像が幾多もあると評する人もいるが、私はそうとも思えない。
ベルイマンの死神が出てくる映画の方が美しいと感じる。使われる音楽も疑問だ。マルチェロやベートーヴェンの音楽はあっていた。その他疑問だ。
Blu-ray買っちゃうやつ。
ちょっと前の「マルケータラザロヴァ」見たいな感じかなと思って観たけど、やはり現代に作られた物でテンポが良く、表現が多様で飽きずに見れた。
エストニアといへば今でこそIT先進国として有名ですがこんな自分達の古い部分を認めている所も素敵すぎて羨ましい。ハロウィンや万聖節はもともとキリスト教拡大のため古いアニミズムをキリスト教的にとり込んだ物、その自然への恐れを内包する土着で人間臭い、獣臭い感じが全編に濃厚に吹き出しています。
死人の魂と食事してサウナ入るの凄いな、、、サウナがどんだけ古くから北欧で生活の一部だったのか再確認した。
まあ話は報われぬ悲恋物なんだけど、森の魔物、使い魔、魔女、農民、領主、牧師、総動員で白黒なのに情報量多めで賑やかです。映像も美し過ぎる。
ムカデ人間博士の遺作ですが、怪しい領主役を見事に演じて居ます、、R.I.P.
欧州モノクロあるある
2022-209M 「ノベンバー」
なんだか解らないが、意識高い系な劇場の芸風と、ポスタービジュアルのジャケ買いで鑑賞を決意。たいてい、この手で決めた作品は退屈極まりない場合が多く、マーケットでは10分で退散ということがママある。
まあ、結果は予想通りだが、欧州のモノクロ作品にありがち(『ニーチェの馬』や『ライトハウス』)な、映画作家の陰キャな世界観が満溢した、評価とビジネスが反比例する、バイヤーが10分でスクリーニングルームを飛び出すタイプの一品だぅた。
ワンダを見た時に予告でとても気になっていて、ビル・エヴァンスのun...
ワンダを見た時に予告でとても気になっていて、ビル・エヴァンスのundercurrentのジャケットのような
美しいポスターが前売り特典についていたので即購入し、公開を楽しみにしていた
不気味でとても美しい映画でした
クレプスキュールフィルム配給第二弾も好みでした
第三弾も楽しみにしています
狼、山羊、黒豚
宮崎駿の世界観をダークファンタジーに、違うか、勝手なイメージで未鑑賞ながらチェコの『マルケータ・ラザロヴァー』に近い雰囲気を、アンジェイ・ズラウスキーの『悪魔』を思い出したり、年寄りたちを映す映像がタル・ベーラの作品を観ているようで、一番近いのはロバート・エガースの『ウィッチ』が鮮明に、陰鬱で重苦しくて小難しい、そんな感じで物語があるかと思いきや全体的にポップな感覚の印象を、十字路での悪魔の契約はロバート・ジョンソンか、オマケに「ひょうきん族」に出て来る懺悔のオッサンみたいなコミカル描写、棺を乗せた馬車のすれ違いは素敵に思われ。
御伽噺のような映像の美しさに魅せられ、不思議な世界観と緊張感が途切れてしまう場面の数々に笑わせられ、残り過ぎる謎を楽しみながら次作にも期待してしまう監督ではある。
暦の上では
「ノベンバー♪」
日本人の半数が「ノベンバー⁉何月だっけ⁉」となる単語だし、エストニアといえば元大関「把瑠都」と料理?
画が徹頭徹尾シャープで美しいのでポスターにしたいくらい
話自体は「花王 愛の劇場」みたいな話で難しくはないが、前半はやや退屈なので、劇場で観るのが吉
ハロウィン映画
当たり前に死者、悪魔さらには疫病神とも身近に暮らす世界。そんな世界のラブロマンスはさぞ美しいのだろうと思いきや……。
モノクロームな美しい画面の中に醜悪な現実を叩き込んでくるイジワルさ滲み出る本作。ラストの悲劇のヒロインになりたくともなれないやり切れなさがまあ切ない。
渋谷はハロウィン(という名のコスプレ)で賑わうが、本来のハロウィンとはこの映画のような趣旨なのであろうなと思った。
民話・神話を絡めたダークな恋愛模様
自分は、映画を観る前はなるべく情報を入れずに観るようにしている。だから本作冒頭で怪しき物体(「クラット」と呼ばれる使い魔だとか)が登場した時点で、「?(ハテナ)」の嵐に襲われた。
舞台となるエストニアには、亡き先祖を追憶する「死者の日」とやらがあり、死者はその日に遺族の元に帰って過ごすという風習があるという。日本で言うお盆に近い。
寒村に住む住民は、クラットを使って隣人から物を盗み生活する。その村に暮らす娘リーナは、青年のハンスに想いを寄せるも、ハンスはドイツ人男爵の娘への恋心を募らせ…という、民話・神話を絡めたダークな恋愛が展開するが、本作ほど鑑賞前に情報を入れておけばよかったと後悔した作品はない。
初見では分からないから何度でも観たいと思わせる。初見時に「?」の嵐が吹く作品は、『イレイザーヘッド』然り『ブレードランナー』然り、後年カルト・ムービーとして評価されている。最近観た『マッドゴッド』同様、本作も間違いなくその系譜にあると思う。
「全てのものには魂が宿る」という、所謂アニミズムを具現的に描いた一本ともいえる。
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