劇場公開日 2022年9月30日

  • 予告編を見る

「戦場スペクタクル巨編…ではある。」1950 鋼の第7中隊 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5戦場スペクタクル巨編…ではある。

2022年10月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

中国の国威発揚映画である。
このようなあからさまなプロパガンダ映画を作ってしまうのだから、中国という国はある意味で凄い。
が、とはいえ、それなりに見応えはあった。ラストのテロップとエンディングの歌曲を除けば、だが。

中国共産党100周年を記念した巨大プロジェクト。三部作の第二段で、日本では続編が冬に公開予定とのこと。
第一段は朝鮮戦争とは無関係で、新型コロナウィルスと戦った武漢の医師たちを描いた「中国医生」らしい。「中国勝利三部曲」と言うそうな…。

韓国では上映禁止となった本作だが、中国国内で歴代最高の興行成績をあげたのは当然としても、世界市場でも2021年の興行収入が『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』に次いで第2位だというから驚きだ。
大川隆法のアニメ映画だって公開第1週は観客動員1位を獲得するのだから、信じる者の力は強大なのだが、中国共産党の神通力は半端ではない。

さて、この映画は中国目線で朝鮮戦争を描いてはいるが、そもそも双方に正義の旗印があるのが戦争というものだから、仕方ない。米軍が中国に侵攻することに対する防衛的参戦という位置づけだ。
それが国家による扇動のための虚像であったとしても、それを信じて戦場で命を懸ける軍人に非はないのだ。
押し売り的な台詞が連発されて辟易とする場面はあるが、軍人たちのパートで戦争自体を肯定するような表現は避けられている。
米軍のパイロットがゲーム感覚で機銃掃射する場面や、義勇軍が崖に隠れて凍った芋にかじりついているのに、米軍はキャンプで豪華な食事が配給されているという場面があるものの、米軍を極端な悪役に描いているわけでもない。
登場する主人公たちの部隊は架空だが、描かれた戦局は一応史実に基づいているし、単に、極限状態で戦い抜く戦士たちをヒーローとして描いているに過ぎないので、それ自体は悪いとは思わない。繰り返すが、ラストのテロップとエンディングの歌曲を除けば、だ。

米軍が9割を占めたという国連軍が38度線を越えて平壌まで攻め返えせば、更に国境を越えて中国まで攻め込むのではないかという朝鮮戦争の戦況を鑑みて、毛沢東は北朝鮮支援軍の強化・必勝を命じる。

長兄の百里を戦場で亡くし、遺骨を抱いて帰郷した次男の千里(ウー・ジン)。兄弟の功績によってなのか、両親に国から土地が与えられるようだ。
家族との憩いの時も束の間、千里は軍に呼び戻される。
指令部の扇動もけたたましく、打倒米軍とばかりに鼓舞された千里たち義勇軍は、前線に無線機と暗号兵を届けるミッションに就く。
そこに突然末弟の万里(イー・ヤンチェンシー)が志願入隊してくる。
中隊長を務める千里と、ヤンチャ盛りの新兵万里の姿を通して、義勇兵たちの強行軍が描かれる。
上沼恵美子は千里だったっけ、万里だったっけ?などと思いながら観ていると、なかなかハードな戦争スペクタクルが展開する。

“香港のスピルバーグ”ことツイ・ハークが主に特撮部分、ダンテ・ラムがアクション部分を担当したらしい。
CGにやや浮いたところが見られたが、なかなかの迫力映像で、なにより圧倒的な物量はスペクタクルの表現にふさわしい。
エグい程のバイオレンス描写はダンテ・ラムの演出だろうか。

一方、ドラマ部分はチェン・カイコーの担当とのこと。これは評価が難しい。
共産党の検閲が入っただろう酷い脚本に従わざるを得ない中で、朝鮮戦争への介入自体を肯定するような姿勢は、軍人たちにとらせてはいない。
毛沢東とその周辺の描写でも、中国の体面と意地を強調させて、北による朝鮮統一を是とする表現は抑えていたように思う。
ただ、毛沢東の息子のエピソードは、事実とはかなり乖離しているのではないだろうか。
千里と万里の故郷のシーンは情緒があってチェン・カイコーらしさが垣間見えるが、入隊した万里が19歳だと説明があるのに、そこでの万里は幼い印象だ。

長いこの映画のほとんどは千里率いる中隊を主体に描かれていて、後半は戦闘場面の連続で、リアルでハードな戦いと超人的なヒロイズムが折り重なっていく。
な、の、に、、、終盤が急にダイジェストになってしまって驚いた。そして、挙げ句にあのテロップなのだ。
この長い尺で収めきれないほど、いったいどこまで描きたかったのだろうか。
命を懸けた軍人を賛美するのは許すとしても、中国民族に西洋がひれ伏したごときテロップには興ざめを通り越して嫌悪さえ感じる。極めて残念で愚かしいが、これが中国共産党が巨費を投じた目的だったのだろうから、やむを得ない。

きっと、チェン・カイコーもツイ・ハークもダンテ・ラムも、あの終盤の編集とテロップが気に入ってはいないはず。

kazz
barbie barbieさんのコメント
2022年10月11日

よくまとめましたね TOP シーンで人民解放軍製作と出てきたからプロバカンダの映画だなと思って観てましたが 中国映画あるあるの年老いた両親が貧しい田舎にいて若い弟が俺も行きたいという話 最初は役立たずで迷惑ばかり掛ける問題児が戦場で一瞬手柄をたててから注目浴びる流れが好きなんですね中国映画は 確かに莫大な製作費は掛かってるのは判ります CG もハリウッド映画に負けてないし迫力あるシーンが連続で描かれていて音響効果も良かったと思う
長時間にしてはそんなに退屈する場面は少なかったと思う 脚本は悪くないが ご都合主義なのか中国の兵士がいつの間にか米軍戦車に乗り込み操縦してアメリカ兵をやっつける場面(笑)やり過ぎだろね 近くに手榴弾が落ちて破裂したのに大した怪我もしてない中国兵士(笑)  真っ赤なマーカー弾を抱えてアメリカ兵士のところまで追いかけていくヒーロー
は中国人に取って英雄なのは間違いないが、そんなことが有り得るのか?ヤラセなのか? 宿敵アメリカ兵を徹底的にやっつける場面の勇ましいBGM はいかにも中国人に受ける最高の娯楽なんだろうなあ 日本兵が出て来なくて良かったです 朝鮮戦争なのに殆ど朝鮮人は出て来ないよ 戦争は中国軍兵士とアメリカ軍兵士だけの戦いなのか?
宿敵アメリカ軍を撃退してやったというプロバカンダだね

ラストシーンの中国人俳優の名前が殆ど3文字なのがびっくりしたな 或いは2文字か 誰が誰だか判りませんが

barbie barbie