劇場公開日 2022年9月3日

  • 予告編を見る

「紅花に心を奪われた人たちの記録」紅花の守人 いのちを染める しのぶさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0紅花に心を奪われた人たちの記録

2023年6月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

幸せ

「紅花」赤でもなく朱色でもなく紅色を作り出す花
遥か昔、室町時代に中近東からシルクロードを経て伝わってきた紅花。第二次世界大戦中に国によって栽培を禁止され、戦後は安価な化学染料の台頭によって、継承の危機に瀕していた。しかし誰に頼まれるでもなく、山形の小さな農村の片隅で密かに守り継がれていたことによって、今では世界的な農業遺産となって注目され始めている。手作業で一つ一つ愛おしみながら丁寧に摘み取っていき、乾燥させて花餅に仕上げる。なんて手のかかる作業なのか?と驚くばかりだった。安価で簡単にできる化学染料もあるけれど、それでは決して作り出すことの出来ない色の持つ力。その紅花で染め上げた布で着物を作り上げる。なんて贅沢なことだろう。時間と手間と愛情と・・今の「コスパ」の先を行く「タイパ」という言葉が闊歩する時代にこそ必要なもののように強く思う。初めて聞いた「烏梅」という煤で真っ黒になった梅。国内でたった一軒の烏梅農家の中西さんの思いにも強く共感するところが有った。なんでこんな効率の悪いことをこだわってしているのか?と思う人もいるのだろう。無駄に思われるものこそ人が生きて行く上で本当に大切で必要なこと声を大にして言いたい。

しのぶ