劇場公開日 2022年9月30日

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「ドラマファンは間違いなく面白いでしょう。ただ、一見さんでも楽しめるのは「さすが」の出来栄え。」ダウントン・アビー 新たなる時代へ 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ドラマファンは間違いなく面白いでしょう。ただ、一見さんでも楽しめるのは「さすが」の出来栄え。

2022年9月30日
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本作は、シーズン1(2010年)からシーズン6(2015年)まで続いたイギリスの人気テレビドラマ「ダウントン・アビー」の劇場版です。
この作品は「今から100年前が舞台」となっています。
具体的には、シーズン1は1912年が舞台で、シーズン2、3、4、5、6がそれぞれ1916年、1920年、1922年、1924年、1925年のようになっているのです。
そのため、例えば、シーズン1の冒頭では「タイタニック」の沈没事故が起こるところから始まります。
また、1914年には「第一次世界大戦」が起こるので、それも反映されています。
このように書くと、「何だ、かなり昔の話なのか」と興味を無くす人がいるのかもしれませんが、実は、「今から100年前」というのは、「現在」と密接に関係しているのです!
それは、2020年から突然、世界を恐怖に陥れた「新型コロナウイルス」が今でも問題となっていますが、この土地勘として「今から100年前」に起こった「スペイン風邪」に近い、という予測があったのです。
「スペイン風邪」は、のちに「インフルエンザ」だと判明していますが、当時は未知のウイルスとして約3年にわたり世界に蔓延し多くの死者を出しました。
そのため、「新型コロナウイルス」も3年程度は続くもの、という土地勘が役立っています。
このように、本作は、今だからこそ実感しやすい作品になっている面があるわけです。

実は、「ダウントン・アビー」の劇場版は日本で2020年1月に第1弾が公開されています。
私は、第1弾の映画から見始めましたが、その時は思い入れがなく、「なるほど、今から100年前のイギリスの上流階級らの物語なのか。そして、『ダウントン・アビー』とは、お城のような邸宅を意味しているのか」と知りました。
その後に新型コロナウイルスが蔓延し、改めて本作の意義深さを実感し、再び映画が公開されるのを楽しみにしていました。

まず、ドラマを見てからの方が、間違いなく楽しめるでしょう。
ただ、私は、ドラマを見ずに、しかも、第1弾の内容さえ忘れている状態で本作を見ました。
基本的な流れは、ダウントン・アビーで映画の撮影をしたいというオファーが来て、映画のキャストやスタッフがやってくる、というものです。
一見すると「華やかで豪華なお城のような邸宅」でも、雨漏れなどが起きたりと問題も多く、メンテナンスの費用もままならない現実があるのです。
このように、本作は、意外に共感できる人物構成となっているのも人気の1つでしょう。
また、ドラマの段階から同性愛者の話が自然に出ていたりと、リアルさを探求しています。
そして、あるシーンで「スペイン風邪」というセリフが出てくるなど、現在ともリンクしているのです。
さらには、「映画」も、「サイレント映画」から、音のついた「トーキー映画」へと移り変わる時代なので、映画の変革期の様相も知ることができるわけです。

強いて言うと、登場人物が多いため、ディテールが把握できない点も出てきます。
ただ、細かい点は気にせずに見ても、大まかな話の段階でも十分に楽しいのです。
ドラマファンは間違いなく面白いでしょう。
そして、一見さんでも楽しめるのは「さすが」の出来栄えと言えます。

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細野真宏