劇場公開日 2022年6月17日

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「前作よりも濃厚なドラマに被さる80’sシンセがノスタルジーを徒にくすぐるパイロキネシス版『野性の証明』」炎の少女チャーリー よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0前作よりも濃厚なドラマに被さる80’sシンセがノスタルジーを徒にくすぐるパイロキネシス版『野性の証明』

2022年6月23日
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鑑賞方法:映画館

前作では『愛と青春の旅立ち』でフォーリー軍曹に虐め抜かれるシド役が衝撃的だったデイヴィッド・キースの好演が印象に残っていますが、今回同じ役を演じているのはザック・エフロン。マッチョでタフなイメージがありますが、本作では相手を思い通りに操ることが出来る能力プッシュを駆使してチャーリーを守ろうとする父アンディを健気に演じています。今回のチャーリーを演じているライアン・キーラ・アームストロングは当時のドリュー・バリモアにそっくりでビックリ。パイロキネシスだけではなく様々な超能力を発揮する役柄を見事に体現しています。

95分という短い尺なので物語の展開はやや拙速ですが前作よりもドラマは濃厚。『ロボコップ』の悪役クラレンス・ボディッカーが記憶に新しいカートウッド・スミスが少ない出番で強烈な印象も残していますし、何より前作にあった取ってつけたような結末がバッサリなくなり、より深みのあるものに差し替えられているのが素晴らしいです。

ちなみに劇中でずっと鳴り響いているシンセの音が完全に80‘sなのも印象的。そこは今回音楽を担当しているジョン・カーペンターの個性がダダ漏れになっているので現代劇なのにずっと懐かしさが漂っています。それは当時を知っている人間の感想なので、80年代の映画を知らない人には物凄い違和感を与えるのではないかと思います。

今回監督に抜擢されたのはキース・トーマスですが、その前はファティ・アキンが監督するはずだったとのこと。恐らくは『女は二度決断する』からの抜擢だったと想像しますが、そのせいかクライマックスには『女は〜』にあったのと同等の深い悲しみと怒りがあります。

個人的にはアンディに対してチャーリーがさりげなく不信を顕にするあたりに『野性の証明』の面影を見ました。

よね