劇場公開日 2023年1月20日

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「圧巻の復讐劇」ノースマン 導かれし復讐者 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5圧巻の復讐劇

2024年2月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

難しい歴史も、難しい言葉も、難しい理屈も
何にもない。
削ぎ落とした内容が強く深い。
ただただ眼の前で親王を殺された王子が、長い年月をかけて、
復讐を成し遂げる話し。

成る程!!「ハムレット」を下敷きにしているのですか。
主人公のアムレートはhamletと書く。
映画の発案者はアレクサンダー・スカルスガルド本人で、
バイキング伝説にも通じるお話し。

良い映画を観た、との満足感と緊迫感に痺れた。
後半の一時間は時間をかけて、急がず慌てず、
観てる私も、その復讐までの時間を愛おしむように、
焦らず楽しんだ圧巻の50分。
役者が良い。
殆ど色を無くしたような映像は、時に影絵でも見ているようだ。
殺し合いも実際に身体を刺すシーンは刀を振り下ろす片方しか
見えない。
血は赤く写らない。
ラストの「ヘルの闘い」
アムレートとフィヨルニルは溶岩沸る山の頂上で全裸で刃一本で闘う。
ここが影絵のようで、スパーンとフィヨルニルの首が飛ぶ。
アムレートも既にチカラ尽きている。
アムレートのなんとも言えない満足の笑み。
太鼓や刃物のぶつかり合う音で、存分に残酷シーンになっている。
ニコール・キッドマン。
イーサン・ホーク、ウィレム・デフォーなどを惜しみなく配役して
贅沢だ。
やはり場を浚ったのは若くて美しいアニャ・テイラー=ジョイ。
惜しみなく裸身を晒して美しさと強さを存分に見せつけた。
最近作では「ミッドナイト・イン・ソーホー」に継ぐ
素晴らしさだった。
主役のアレキサンダー・ステルスガルドもやや年老いた感じだが、
大きな逞しい身体や北欧男の寡黙なバイキング魂は、奥底から滲み出る。
一見して地味な作品だが、心に深く残る。
良い映画を見せて貰った・・・その満足感は深かった。
惜しむらくは前半にあまり見どころがない点。
10分か15分は短くできたと思う。
それにしてもアニャ・テイラー=ジョイはデビュー作が
ロバート・エガース監督の初監督映画「ウィッチ」のヒロインだった訳で、
ほぼ10年近く前だからアニャは18歳位だった筈。
堂々としていて神秘的かつ秘密と抑圧が感じられた。
そしてほぼ10年後。
見違えるほどのゴージャス美女に成長した。
それにしてもエガース監督作品になんと似合うことか?
エガース監督のミューズ!!
男同士の深い確執をホラーテイストで描いた「ライトハウス」も、
ギリシャ悲劇のような映画だった。
モノクロのような映像と光と影のコントラスト。
そこに人間ドラマ、なんとも深みがある。
この映画「ノースマン導かれし復讐者」、
劇場公開では成績が良くなかったが、配信やDVDの人気が高くて、
9000万ドルの予算は無事回収して黒字となり、
人気の高さを裏付けたと聞く。
次回作が待ち遠しい監督さんだ。

琥珀糖