「シャンタル・アケルマン監督による3時間20分超の映画」ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地 たいちぃさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0シャンタル・アケルマン監督による3時間20分超の映画

2022年11月16日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

1970年代のヨーロッパ映画で最重要な作品と言われるシャンタル・アケルマン監督作。
セリフが少なく、固定カメラでの長回しという映画ならではの手法によって、主婦の姿をアケルマン監督が細部に至るまで突き詰めた3時間20分超の映画。
長尺であるが、飽きることなく、じっくりと観ることができる作品。

主婦ジャンヌは、ブリュッセルのアパートに住み、料理を作り、服を毎日同じようにたたみ、買い物に行き、……と一見すると機械的に見える生活を続けている。
しかし、主婦ジャンヌは思春期の息子が出かけた後、自宅で売春をしている。このこと自体が驚きなのだが、売春の客を迎える姿・見送る姿すら事務的な感じ。

主婦ジャンヌを演じたデルフィーヌ・セイリグという女優は優雅な雰囲気であるが、平凡な主婦の機械的な日常を丸3日間描くことで、1日目よりも2日目は小さなミスが起こり、更に3日目は……という「少しずつ日常生活がズレていって、破滅に向かっていく怖さ」を感じる映画であった。

ジャンヌの妹はカナダにいて、妹からの手紙を読むことで(ジャンヌの夫がすでに亡くなっているなど)家庭状況を観客に伝えるあたりも上手い演出。

個人的には、ジャガイモを1袋買ったジャンヌが、紫色調の街並みを歩いていく後ろ姿のシーンが、とても綺麗に見えた。

衝撃的なシャンタル・アケルマン監督作品。

(※)今年(2022年)日本初公開された1975年作品だが、リマスター版なので映像は綺麗。なお、公開邦題は『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』。

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たいちぃ