劇場公開日 2022年5月13日

  • 予告編を見る

「ニホンとニッポン」教育と愛国 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ニホンとニッポン

2022年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 閣議決定事項や政府、自民党の見解と異なる意見を唱えたら、何でもかんでも「反日」「自虐史観」だと攻撃される不穏な時代。さらに顔だけで人気のある政治家や首長たちによるツイッターなどによるSNS攻撃。意見すれば名誉毀損で訴えてくるといった異常な手段に訴えてくる狂った人たち。映画はうんざりするような歴史修正主義者たちの意見や、検定教科書によって倒産に追い込まれた出版社の執筆者たちの両側からのインタビューで成り立っている。

 検定に関しては以前から論争があった。有名な家永三郎氏の一連の裁判だ。当時から沖縄戦に関する問題はあったのだ。80年代には「侵略」という言葉を「進出」に置き換えるといった教科書問題。とにかく根底にあるのは日本人の伝統と文化、アイデンティティとかプライドといった考えが邪魔をしているだけ。国家としての誇りなんてのは一般日本人には関係ない。悪かったところは素直に認めるドイツの教育を見習うべきだろう。

 序盤は道徳教育についての疑問点を紹介していたが、映画としてはちょっと眠くなりそうな展開。しかし、徐々に右派の論客が次々とボロを出すので笑わせてくれた。それにしても東大名誉教授が学問を「考えなくてもいい」などと驚くべき発言を繰り出す。これはちょっとおかしい。他にも(従軍)慰安婦問題での牟田さんの件といい、学術研究にも口を出す政府は異常な事態と言ってもいい。研究によって軍の強制ということがわかれば都合悪いもんね・・・

 育鵬社と学び舎という教科書出版社。戦前の教育に戻そうというのが育鵬社なのだろうけど、もっと興味深かったのが神武天皇以前の神話の人物まで教科書に載っていることだった。イザナギノミコトとか覚えなきゃならんことか?それなら手塚治虫先生の「火の鳥」を教科書にすればいいじゃんか!まぁドロドロとした天皇家を調べるのも面白いけどね・・・

 それにしてもスガ元首相が喋ると、なぜこうも笑えるんだろう?質問の意味を理解していないのか、とぼけてるだけなのか?シンゾウ氏にしても訳分からんこと言ってるのに信奉する人たちがいるってのも空恐ろしいものがある。そんな信者だった森友学園の籠池泰典氏が登場したときが最高潮となっていた。もう洗脳は解けたのか?シンゾウ氏が「ニッポン」を連呼していたけど、籠池氏は「ニホン」と発音していたし、まぁ面白い人物だ。

 元同僚Tは「日本軍は戦争で人を殺していない」と主張するほど頭がおかしいけど、こんな人が増えたらどうなるんだろう・・・嗚呼。

kossy