配信開始日 2022年11月4日

「エノーラはサスペンスにシフトしちゃったのか……?」エノーラ・ホームズの事件簿2 NandSさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0エノーラはサスペンスにシフトしちゃったのか……?

2023年2月19日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

興奮

知的

前提として
・2回目
・前作「エノーラ・ホームズの事件簿」は視聴済
・原作は未読

前回とはだいぶ毛色が違う作品に変貌。イギリス内部の、暗く不穏な雰囲気が漂う。

前回は一人の女性として成長するエノーラの物語だったのが、今回は一人の探偵として成長する物語。
探偵としてまだまだ未熟なのに、一人で無理をする姿が観ていて痛々しい。どうにも共感性羞恥が抑えられなかった。
自立している人間ではあるが、"自立しすぎている"。これが今作エノーラの障害。しかし、そこから成長するカタルシスも薄い。
その分、兄としてのシャーロック・ホームズの方に感情移入しやすくなるはずだが、彼は推理の方に全力を注いでいるために移入しづらくなっている。
誰の視点で物語を観ればいいのか、そこが定まらない。

母親との回想は全体的に少なく、兄とのやり取りが多い。
よく知られているシャーロック・ホームズが、カッコよくて頼れる兄貴になっていて興味深かった。人生だけでなく、探偵としても先輩な彼はカッコいいのだ。
でも作品の弱点になっているとも言えて、個人的に観たいのは、あのハイスペックなシャーロックが解けない謎を、エノーラとテュークスベリーがさらっと解決するところだ。彼女たちは、"シャーロックと真剣勝負ができるワトスン"的な役割を貫いていいはず。
けれども残念ながら、黒幕が強すぎるし、シャーロックがカッコよすぎた。
原作がヤングアダルト小説であることを考えるとしょうがないのかもしれない。

前作と比べて、フェミニズム要素も強すぎる。
女性労働の革命関係でサラ・チャップマンが出てくる。
もちろん「エノーラ・ホームズ」全体のテーマと、サラ・チャップマンの親和性は非常に高いのだが、
「エノーラ・ホームズの事件簿2」のストーリーで観るとしっくりこない。
あと黒幕も。

演出・編集面で言うと、全体的に前振りが物足りない。
特にエノーラとテュークスベリー卿のロマンティック。前振りがないわけじゃないし、なんなら多い。なのに途中で別の話題が入るからテンションがぶつ切りになって、盛り上がる前にピークが来てしまう。
その他のシーンも同じ。最後の方の乱闘シーンとか全然盛り上がらない。
多分、ミスリードや伏線を作ろうとした結果だと思う。ミスリードが多い。要らない伏線もいくつかあった。
編集や演出が全体の情報量に負けている。

色々と悪く書いたけど、前作からパワーアップしたところもいくつかある。

まずはエノーラのカメラ目線。表情が可愛らしいものから、大人として成長した複雑なものに変化。観ていて"楽しい"というよりも"共感できる"ものに変化していた。ミリー・ボビー・ブラウンがすごい。
そしてテュークスベリー卿のヒロイン感マシマシ。これが非常にうれしかった。観ていて応援したくなる。エノベリカプ厨が喜びます。
探偵・ミステリー要素も増量。ただし、そういうジャンルの作品として観るには物足りない。もう一歩必要だと思う。

前作からパワーアップした部分もあるが、前作が好きすぎるとどうもしっくり来ない、そんな作品でした。

NandS