劇場公開日 2022年4月16日

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「グローバルサプラチェーンの理不尽」メイド・イン・バングラデシュ 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0グローバルサプラチェーンの理不尽

2022年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

世界のファストファッションの縫製工場が集まるバングラデシュで働く女性たちの現実を描いた作品。バングラデシュは近年、高い経済成長率を維持しているが、それを支えるのが輸出産業。その輸出産業の中で大部分を占めるのが衣料関係だ。労働力を安く使えてしまうために、世界中のファッション企業がこの国の工場で生産をしている。
一日に1000枚以上のTシャツを作っても一カ月の給料はTシャツ2,3枚分にしかならない。それでも欧米の企業人はコストを下げろと要求する。誰かの快適な暮らしは、世界を巡り巡って誰かの苦しい生活につながっている。グローバル経済の理不尽さを強烈に浮き彫りにする作品だが、登場する女性たちはどれも生き生きとしており、戦う気概に満ちている。ただのかわいそうな人たちを描いたわけではない。自立して、自らの権利を勝ち取るために戦う力のある人々が描かれる。ラストカットの主人公の尊厳あふれる顔が大変素晴らしい。

杉本穂高