劇場公開日 2022年4月8日

「どういう筋で観たら良いのか本当によくわからないし、ここは「隣国の」日本です。」連鎖 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0どういう筋で観たら良いのか本当によくわからないし、ここは「隣国の」日本です。

2022年4月9日
PCから投稿

今年100本目(合計373本目/今月(2022年4月度)10本目)。

今年の記念すべき100本目で、まぁ「大怪獣~」クラスに積極的悪害があると思われる駄作とは言わないにせよ、これはちょっとなぁ…というレベルです。まぁ怒るというより「どうするとこうなるのか…」というところが多いです(映画をチョイスしたシネマートには責任はない。中をチェックして流す流さないをすると、結果的に検閲と同じになるため)。

8歳程度の知能した持っていない知的障害(とは明示的に書いていないが、知的か精神遅滞か)の方が色々なトラブルを起こし、さらにある嫌疑をかけられ…というお話。
問題はそこからで、色々な嫌疑を起こすと理由が何であれやはり(韓国が日本以上に、日本でいう東京や大阪のよな大都市が、ソウルや釜山など以外に少ない)事情もあり、いわゆる「村社会」といいましょうか、「閉じた社会」というものはあります。
そのため「障害者は●ね」といったポスターを張る人が出てきたり(余りに不穏当なので一部は自己規制しています)、さらには「障害者は信用できない」、「障害者は店に入ってくるな」という話すら出てきます。

しかし、映画の趣旨からいえば主人公は知的障害(か、精神遅滞)であり(このことについては、下記参照)であり、「障害者は~」といえば、日本では最も多い類型が身体障害であることは事実なので、配慮不足にも程があります。しかし、身体障害をお持ちの方は(私もそうですが)分別はつくので、ここで「身体障害を除く2障害(知的・精神)は来るな」なんていう字幕に書き換えたら、それこそ問題になります。つまり、ある程度嫌な気分になることはあっても、そのまま観るしかないのです。

さらに問題なのは本映画自体は作話の範囲ですが、日本でも実際に虐待事件や当事者の犯罪行為等が問題視されている(いわゆる、累犯障がい者の話ですね)ところ、そういう問題には今では行政・地域行政(特に、福祉行政)が入っていくのが当たり前の中、その話は「一切」出てこないという状況です。素人どうしでどうするんでしょうか…。そりゃ、ボーダーギリギリならまだしも、「8歳程度の知能は」は「中度と軽度」の境目ラインであり(日本の話)、これを民間でどうこう感嘆書がどうだの示談がどうだのという話をしても余り意味がありません。「餅は餅屋」というように、福祉行政等につなげるべきなのです。しかしそれらの話は一切なし。

もちろん、ここは日本ではないので日本と同じ制度がある国もない国もあります。しかし隣国の韓国は細かい制度は違っても(統治時代の影響もあるので)憲法や民法、裁判の制度など日本と似た文化を持っているところです。また「行政」という概念も明確に持っています(日本以外で、「行政書士」の資格があるのは、韓国と台湾(便宜上の国扱い)だけです)。にも拘わらず、作話の範囲でもこうした話は一切出てこず。

そうすると「知的障害の子を産んだ親は一生責任を取れ」「できるだけ長生きして子供が迷惑をかけないように見張れ」という話(なお、成年後見といった話も一切出ません)もなければ、単に「迷惑な人が迷惑な行為をやって示談だの何だのということを民間同士で書くだの書かないだの(示談なので、相手側が許すということが前提になります)という話をやったところで、もめている状況では(極論、弁護士の方を入れようが)無理です。強制的に示談や感嘆書を書けとまでは弁護士の方が「被害者の方に」強制できないからです。

そうであれば福祉行政などにつないで適切な処理を行政という国の機関が行うべきところ、そういう話は「一切もって」存在しないので、何をストーリーで述べたいのかまったくわからず…。しかもエンディングの終わり方も謎ですし…。せめて「本作品はフィクションですが、本国(韓国)では現在こういう取り組みがされています」程度出てくれば話はまだしも、それもないので、何をどう見るのかも怪しいです(さらに3障害全部一緒にされているなど、明確に配慮が足りない)。

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(減点1.2) 正直、どうするとこういう作品にGoが出るのか…という印象です。もちろん、知的障害をお持ちの方の社会参加権等(憲法論ですね)をテーマにしたかったのは理解はしますが、辛うじて読めるのはそれだけで、憲法論をいくらかざしても仕方がなく、現場で実際に動いてくれるのは行政(特に、地方行政)しかありません。その話が一切出てこず民間どうしでやったのやらないだのという話を延々するのは、それもそれで「配慮が足りない」(まぁ、映画館という場所の性質上、「3障害ある」といっても、大半の方が身体障害であろうことを考えれば、「身体障がい者はそんなことしないぞ」という感想はあっても、字幕不足だなとは思えても、仕方ないなと理解できる)ところです。
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 ▼ この主人公について

 ・ 「8歳程度の知能」と紹介されます。日本では知的障害の手帳のみ都道府県基準です(身体・精神は国の基準があります)。多くの都道府県で「7歳6か月」で軽度・中度を分けているので(8歳の県も7歳の県もあります)、「やや中度よりの軽度ではないか」というところです(なお、重度というクラスは3歳児程度の知能(IQ19以下)で、「寝たきり」であることが大半なので、トラブルを起こすことが「逆にない」のです)。

 もちろん、日本の基準が韓国にそのまま当てはまるわけではないですが、日本で軽度判定のものが韓国で重度になったりその逆も考えづらいので(IQ自体が世界基準だし、日本と韓国は隣国)、ある程度の推測はつきます。

 そして、そうであるなら、(日本基準で考える限り)療育手帳(知的障がい者手帳)も撮れますし、福祉行政につなげる方法はいくらでも存在します。

yukispica