劇場公開日 2023年6月2日

「からから」渇水 AMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0からから

2023年6月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

出ました、子供が不憫な話。歳を重ねると、もうそれだけで涙腺が緩む。でも、定期的にこういう話を補給することは、精神安定に良いと勝手に思い込んでいる。

本作はある水道局員の話。料金を滞納している家を廻って、支払いが出来なければ水栓を閉めて回るのが仕事だ。とある田舎町で、水不足の真夏日が続く日々。節水が呼びかけられ、プールも閉鎖される酷暑の中で物語が始まる。そんな中で水栓を止めに行く水道局員コンビに、生田斗真と磯村勇斗。トラブりながらも淡々と仕事をこなしていく毎日だが、ある日、母子家庭として暮らす母親(門脇麦)とその娘の二人姉妹に出会うことから、物語が展開していく。姉妹の物語と、水道局員の抱える家族の問題が交互に語られ、やがてドライな現実に耐えられなくなった水道局員は、テロ(?)へと追い詰められていく…のかな。

世の中も干からびていくようで、登場人物がみなギスギスしていく。カラカラで汗も怒りも乾いてしまいそうな空気感を、16mmフィルムで撮られた映像がうまく醸し出していた。
生田斗真が、問題を抱えながら諦観を携えて仕事を淡々とこなす感じが良い。歳を重ねて、少し演技に幅が出てきたように感じた。
全体的にあまりウェットにならないよう、気を使っている感じがしたが、そのためにそれぞれのエピソードがプロジェクト深まらない軽さが少し残念な気もするが、これも制作側の意図だとすれば納得できる範囲か。

設定は少し違うが「フロリダ・プロジェクト」を思い出す。あちらは夢の国のお膝元での母子家庭の貧困に焦点をあてた内容だが、どちらも子供達の天真爛漫さと彼らが置かれた境遇の対比が、モヤモヤした感情を増幅させる。興味ある方是非。

今年の中では、充分面白かった作品でした。

AMaclean