劇場公開日 2022年11月23日

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「シリアス過ぎる演技の評価は?」母性 ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0シリアス過ぎる演技の評価は?

2022年12月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「母性」とタイトルがついている割には、映画を見終わっても「母性」が何かについて納得のいく答えはなかった。むしろ余計に分からなくなった。娘が母に愛されたいのは「本能」だが、母が娘を愛するのはどうやら「本能」ではないらしい。ルミ子は娘が生まれても、母になり切れず、自身が娘のままであった感じである。「母性」の特徴は「無償の愛」である。何も見返りを求めず、どんなことがあっても無条件に娘を信じ愛することである。ルミ子は自分が母の愛を得るために行ってきた(打算的)な方法を娘にも要求してしまった。自分が「娘」のままであり、「母」になれないのを、ルミ子はずっと自覚しないまま娘を愛していると思い込んでいたようだ。清佳は母から愛されているという実感が得られずずっと苦しんでいた。そんな気持ちのすれ違いが生んだ悲劇だ。
相容れない二人の「愛の形」が、湊かなえ一流の「事実は一つだが、真実は人の数だけある」という物語になった。同じ場面でも声の調子や表情などの違いによって、受け取る側の真実は全く別物になることもある。そんな違いを微妙に演じ分ける戸田恵梨香と永野芽郁の演技に注目であるが、正直二人の気持ちがよく分からなかった。二人は「ハコヅメ」でコミカルな演技で楽しませてくれたが、本作ではシリアス過ぎる演技で我々を悩ませてくれた。

ガバチョ