劇場公開日 2022年11月3日

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パラレル・マザーズのレビュー・感想・評価

全73件中、21~40件目を表示

4.5血筋が大事。

2022年11月29日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

自分と同じ日に出産をした若い母親アナの子供と自分の子供が取り違えられたことを知りつつ、それを隠しながら若い母親と共同生活を送る話。

今作、今の映画には珍しくめちゃくちゃ血の繋がりを大事にする映画。単純に取り違えられた子供をどうする?という話だけでなく、やたら子供が誰に似てるか気にする登場人物達や(ほぼレイプなのにその中から誰に似てるか探すのはちょっとさすがに引いた)、自分の本当の子供だとわかった瞬間あっさり連れて帰りやがるアナ。

さらに、毒親でも母親との繋がりを途絶えさせないようにアナに説得する主人公など、血の繋がり否定派な私にとってはちょっと合わない部分もあった。

でも、ここまで血縁にこだわるのは根底に内紛によって無惨な死を遂げた先祖に対する思いがあるから。劇中に出てくる曾祖父や祖父の骨を探している人々は皆、当時幼かったのでほぼ神話のような人から聞いた家族の話を家族の思い出として大事にしている。

この人達と、家族との関係が上手くいっていないアナや子供のルーツを隠そうとする主人公が対比されてるのかなぁ。自分も実の親とはほぼまともな会話がないからね、反省したよ、少しはね。

自分の血筋から目を背けることは決して許されない、という強いメッセージが赤色で強調されてるけど、今年公開された、血筋を否定してる『ハウス・オブ・グッチ』とは真逆の使い方で面白かった。

重い話でもあるけど、普通にスペインの裕福な暮らしが見てて楽しかった。そして主人公イケすぎ。基本的にずっと股開いてる座り方なのもかっこよかったし、私には好意的に映った。

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せつこん

ジャニスの部屋に住みたい

2022年11月29日
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映画の登場人物に正しさを求めてもしょうがないんだけど、アナにイライラする! 妊娠する顛末もそりゃ男どもが最低最悪だけどもう少しだけ賢明になれなかったのかと思ってしまうし、芋の皮むきができないって言い出すのいくら10代でもちょっと引くし、ジャニスを責めるのは意味が分からん。この私が、ペネロペ・クルスと美形女子の百合要素を楽しめないって相当だよ……(演じたミレナ・スミットは初めて観たけど素敵)。

それにしてもペネロペは今回もかわいいなー。綺麗な顔してるなー。ペネロペの顔見てるだけで2時間もつ。ルッキズムのそしりは甘んじて受ける。あとジャニスの部屋や服がとてもいい。アパレル系のカメラマン設定だから遠慮なくおしゃれ。

スペイン内戦のことは記憶からすっかり抜け落ちていたけど、極右のファランヘ党が反乱を起こして勝ってしまい、フランシスコ・フランコの独裁政治が始まったやつね。なるほど。

と復習してみたところで、祖父や曾祖父の魂を安んじることと、生まれてきた(くる)子どもと未来を生きることと、どっちも大切だね的なプロット、やっぱりちょっと粗いなあという印象にはなる。

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デブリ

5.0歴史と向き合う

2022年11月27日
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序盤の状況説明のスピーディーな鮮やかさと展開、終盤の転調と脚本が巧みだなあと思った。

アルモドバルは今までもスペイン内戦を必ず仄めかしてきたけど、今回はより直接的に描く。そういうことかーと思って、過去作も見返したくなった。直接的な同性愛描写は珍しいのでは。

母性礼賛ではなく、父親の不在、不在の裏にある歴史。子供より夢を優先する母性の薄い母も断罪することなく受け入れる。母と娘のように料理を教える。

ガラガラ、義眼、指輪、写真、そこにいた証。

50代のペネロペが30代を演じているけど違和感なし。タバコを吸う姿がかっこいい。人参を切るのが下手。

演劇をやるには金持ちに見えすぎるというセリフは笑った。

私も自国の歴史と向き合う頃なのかもしれないと思った。でもどうやって?

中庭のある家に住みたい。

いつも通りファッションもインテリアも素敵なのだけど、アナがスポーティな格好をしていてフレッシュだった。

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hyvaayota26

4.0理論的に間違っていても、人間的に正し選択がもたらす何か。

2022年11月27日
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アルモドバルは好きな監督の一人。
タイトルを見ただけで期待値マックスです。

見始めてすぐ、これって関係性(の変化)に焦点を当てて観るのが良いのかな?と思った。
関係性に注意して観てみると、とてもスリリングだし、感情を揺さぶられます。

理論的には間違っているかもしれないけれど、人間的には(そして状況的にも)正しい選択をする。
そしてその選択が、時間が経つほどに深い影響を与えてしまうことを予感しながら、俯瞰している。
赤ちゃん、母、おばあさん、と続いて、俯瞰的な位置で見ている自分も、なんとなく母的な気持ちで見てしまう(男性ですが)。

これは期待値を軽く超えてきたな、と思っていたら、終盤になって登場人物が増えてしまった。

人物が増え、展開も早くて、関係性で見たくても追いつかなくなってしまった。
そして映画が終わってしまった。

体感では45分くらいの短さ。
集中してみることができたにしても、あっという間でびっくりした。
面白さを言葉にできないのがもどかしい。
今までアルモドバル作品の見方を間違っていたかもしれないと、自問自答しています。

終盤についてはいずれまた見直さねばと思います。
すごい映画だった。
終盤が理解できていたら、満点だったのに、悔しい!

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凪

5.0圧倒的感動で迷いなく今年のNO.1に、やっと巡り会えた喜び。過去・現在・未来と、父や夫のいないパラレル・マザー達の繋がりを通して紡がれる愛と家族の物語。

2022年11月27日
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①ペドロ・アルモドバルは既に現代映画界の名匠だが、この映画で本当の巨匠になったように思う。
②映画の外枠として、スペイン内戦で殺された祖父や曾祖父の遺骨を発掘することを願う女達と遺骨がやっと発掘される話が、ブックエンドの様な形で真ん中の様々な母達・女達の物語を挟んでいる。
これにより、これまでの豊穣ではあったがどちらかと言えばパーソナルな話を描いてきたアルモドバルの映画の世界が更に拡がった。
戦争で夫や父を失った妻や娘の物語は、スペイン内戦にとどまらず世界共通の悲劇であり、現在進行中の悲劇でもあるからだ。
一国の独特な歴史の悲劇を描きながらそれがユニバーサルな視点を持ち得るという好例である。
日本も決して他人事ではない。私の母方の大叔父もインパール作戦でインドのアッサムで戦死し(餓死だったらしい)未だに遺骨を捜せない。捜そうにも未だに現地に日本人が入れないから仕方ないが(イギリス兵の墓地はあるのに)、大叔父の家族も四散してしまいほぼ忘却の彼方である。
それでも、南洋の島々では引き続き遺骨探しは続けられているし、世界の他の場所でも行われているだろう。非業に亡くなった家族を骨になっても引き取りたい、家族と同じ墓に葬ってあげたい、という想いは世界共通、人類共通のものなのだろう。
私は世間の人々ほど家族に拘泥しない人間だが(だから結婚しない。でも人生の大半を家族に尽くしてきたので世間からは良い息子だと評されている。世間ってチョロいとは思わないけれど)、そういう想いを軽んじるほど唐変木ではない。
③この映画に登場する女達も父、祖父、曾祖父の遺骨を何とか家族の墓に埋葬したいと願い、ラストやっと掘り出された骸骨たちとそれを感極まって眺める女達の姿は胸が震えるほど感動的である。
劇中ジャニスがアナに“自分の国の歴史くらい知りなさい”という台詞は今の日本でも耳が痛いのではないだろうか。
④間に挟まれた映画の本筋では夫や父のいない様々な女達・母達の物語―これまでのペドロ・アルモドバルの映画で描かれてきた母と娘、女達の物語の変奏曲―が奏でられていく。
中心となる嬰児取り違えは山口百恵の『赤いシリーズ』じゃあるまいし、2020年代ではちょっと無理気味な設定かとそこが気になったが(映画の大きな瑕疵になる程では無いが)、そう言えば我が日本でも数年前に公開された『そして父になる』も嬰児取り違えがテーマだったなぁ、と。この映画を観たことほぼ忘れてたが、それ程古いテーマでもないらしい。
④これまで数々のアルモドバル監督の映画で好演・名演を見せてきたペネロペ・クルスがここでも圧倒的な名演である。
予想外の妊娠ながら(避妊はしなかった?)40になる前に母になりたいという考えから(母になるという想いはそれ程強いものなのか残念ながら男の私にはよくわからないが)シングルマザーの道を選ぶが、生物学上の筈の父親の一言から疑惑が湧き、DNA鑑定の結果自分の娘だと思っていた赤ん坊は血が繋がっていないことが判った時のショック。もしかしたら自分の本当の娘かも知れない赤ん坊の死を知った時のショック。真実をなかなかアナに告げられない葛藤(もう一人の娘も失うかも知れない恐れ)。アナへの愛しさと羨ましさとが混ざった複雑な思い。

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もーさん

4.0スペイン巨匠監督が紡ぐ"現実に向き合う女たち"が死者と対話する映画

2022年11月22日
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 仕事で出会った一夜限りの関係の男性との子を身籠り年齢に鑑みてこれが母になる最後のチャンスと産み育てる決意をした女性と、クラスメイトの少年たちからの集団レイプによって身籠った子を悩んだ末に両親の反対も押し切って生かす決断をした少女、この二人のシングルマザーが見舞われる我が子の取り違えとそれに対する真実の希求の物語です。
 こうした己の都合とモラルとの相克はドラマになり易く、おそらくは邦画や他の地域の洋画であれば、そのままジャニスが口を噤んでセシリアが大きくなってから真実が明るみに出る、あるいは真実に気付いたアナの口を封じようとジャニスが彼女を殺めてしまう…といった、いわば"秘する"ことによるドラマ作りの方向に流れるハズです。
 しかしながら本作では主人公のみならず他の登場人物全てが、まるで真実を奉じることあるいは己に正直であることを至上命題にして生きているかのようです。
 そこには「過去を忘れて(即ち、真実から目を背けて)未来には進めない」という監督の強烈なメッセージがあり、スペインがフランコ政権から民主化へ移行するなかで起こった反権威的な音楽・絵画・映像などの芸術活動に加わった70年代の過去からの自身の一貫したスタンスの顕れのようです。
 主人公だけならまだしも登場人物みんなに己の信条を代弁させるのはフィクション作品としてはやりすぎな気もしましたが、だからこその力強い作品に仕上がっている、ということは言えるでしょう。

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O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)

5.0アルモドバルが次のステージへ

2022年11月21日
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前作ペインアンドグローリーが自叙伝的な内容でしかも出来が良すぎて、もうこれで映画製作を終わりにしようとしてるのではと不安だったけど、また次のステージへとあがったんですね。彼の定番テーマ「母親」を描きつつ、そしてそれは物語として十分素晴らしいうえに、解決していない問題を世界に知らせる役割まで負っている。ただ日本人にはスペイン内戦てあまりにも関わりがなくて興味を持ってもらえないかも。

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三毛猫泣太郎

4.0待望のアルモドバル監督、新作!

2022年11月20日
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新作が待ち遠しい監督のうちの一人。リアルタイムで鑑賞できることに感謝です。

予告編で、赤ん坊取り違えストーリーなんだな、と思ってましたが、意外とそこはあっさり進んで(え?それでいいの?って感じはありつつ‥)スペイン内戦にまつわるストーリーに続く。

まとまりが悪い感じもありつつ、オープニングからグイグイ進んでいくし、飽きずに最後まで魅せられました。

アルモドバル監督の映像美、衣装やインテリアが美しく、色彩豊かで、それだけで、もう最高に満足です。ペネロペも、いい感じで貫禄みせつつ、可愛さも健在。素敵でした♪

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Sakiko

2.52つのお話し

2022年11月19日
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前知識なく観ました〜

取り違えの話しかと思いきや、スペイン内戦の話まで

2つがどうもしっくりこなくて

ジャニスの気持ちには寄り添えるものがある
真実を確かめる覚悟、そしてそれを告白する勇気
でも、え?そんなすぐ渡しちゃうの?親権は??病院の責任は???などとは考えなくていいんだろうな

会ったこともない曽祖父の過去にも真剣に向き合う
血だろうか
親子、家族、真剣なんだな

でも、やっぱり二つが私の中では噛み合わなかった、、

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おんぷ

5.0赤、黄、緑などのパステルカラーのスクリーンのオシャレさ。ペネロペ・クルスの熱演と忘れてはならないスペイン内戦の歴史

2022年11月19日
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映画「パラレル・マザーズ」。ペネロ・ペクルスと監督ペドロ・アルモドバル。さすがスペイン、赤や黄、緑を基調としたパステルカラーのスクリーンがとてもよい。

赤ちゃんの取り違え、DNA検査、それを伝えようとする苦しみ。倍半分の年の差の母親の違いと接触、それぞれの母の存在。

スペイン内戦の犠牲となった出身地の悲劇と遺骨調査されないままの現実。忘れてはいけない、伝えていかなければならない歴史。これに立ち向かうペネロペ・クルースと研究者。

この2つを柱に物語が展開される。ペネロペ・クルスの熱演と悲劇の歴史の重みを感じさせる映画であった。

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M.Joe

3.0うまいことまとめられなかった、という感じ

2022年11月19日
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さまざまな問題を抱えつつ、
最後にまとまったのかは不明だった

テレビドラマっぽい感じ

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JYARI

2.0かなり消化不良

2022年11月17日
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一本の物語なのに3本のオムニバスを見た感じ。いろんな要素がぶち込まれていて、血縁ってとこに帰着させてるようなんだけどどうなんだろ?なんか、物語の展開が激し過ぎて、テレビドラマの総集編見てる気分。

スペインの歴史が背景にあるみたいですが、疎いのでよくわからず。にしても、その壮大なテーマに帰着させるためにジャニスにはかなーり自由度が高い性格と価値観与えてるし、行動に脈絡ないし、発生イベントもかなーり無理があるように思えちゃう。なんかなんか気持ちが悪いんだよな、展開が。

全ては丸く収めようとしてる製作陣の意図がみえちゃうんだよなー。で、ラストでなぜか社会派チック。
むーん。なんだかな。

短編オムニバス3本セットのほうがよっぽどよかったんじゃ?とにかく、詰め込み過ぎ。

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バリカタ

4.5幾重にも重なった要素が、まさに結実したラストが印象深い一作

2022年11月15日
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予告編が示すように、本作は新生児の取り違えという非常に現実的な事件を題材として扱っていますが、それと並行して約80年前のスペイン内戦の悲劇という歴史が語られます。このように本作では、二人の母親、二人の新生児、過去と現代、絶望と希望といった、いくつもの相対する要素が折り重なり、よりあわさっています。

アルモドヴァル監督は映画監督として活躍すると同時に、ちょうど本作のアルトゥロ(イスラエル・エレハルデ)のように、スペイン内戦で起きた悲劇に向き合う文化活動を展開してきました。本作では手軽にDNA検査キットが入手できて、非常に詳細に血縁関係に関する資料を手に入れることができますが、これはスペイン内戦で行方不明になった人々の身元を、発掘された遺骨から割り出していく活動が広く普及したためだそうです。

このようにアルモドヴァル監督は、現実の文化活動と自らの歴史に対する使命感、そして卓越した語り口を実に巧みに融合させています。監督作品らしい、さまざまな要素が随所にちりばめられており、特に赤と淡い緑、そして黄色が巧みに配置された絵作りは素晴らしく、「アルモドヴァル作品」であることを強く印象づけます。

しかし彼の熱心なファンでなければ作品のメッセージを読み取れない、ということは決してなく、中心となるドラマは非常に明確で、かつこれまでの監督作品としては一番円熟しているのではと思えるほどの演出力のため、誰が観ても強い印象を残す作品になっています。もっとも、ウキウキと楽しい気分になる映画ではないんですが。

全ての「パラレル」な要素が一気に繋がるラストは、スクリーンの境界を超えてこちらにやってくるような生々しさと迫力があり、非常に見事です。

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yui

5.0DNA

2022年11月14日
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知的

幸せ

「やられた」
またもや、この何とも言えない不思議な感情を味わってしまった。

多様性やジェンダーという概念が今ほど認識されていなかった1999年に、アルモドバルは「オール・アバウト・マイ・マザー」という作品で、ジェンダーや血縁を超えた女性とLGBTQとの絆と連帯を描き、多くの人達の共感を呼びました。

本作は「オール・アバウト・マイ・マザー」の世界観を引き継ぎつつも、「僕の母に似ている」とか「肌の色が黒い」などの血縁に関する描写が多々あったので、私は少々意外に感じました。特に、男性が自分の子供を気にする様な描写はあのアルモドバルにしては珍しいです。しかし、物語が進むに連れて、アルモドバルが血縁を全面に出した理由が分かりました。

物語は、ジャニスと彼女の子供のDNA検査を中心に進み、ジャニスの曾祖父のDNA検査でラストを迎えます。DNAを通して、スペインの過去〜現在〜未来の連続性を表現している様に感じました。

スペインでは、スペイン内戦下で主にレジスタンス側に居た人達が殺害され、その遺体が今でも大量に埋められています。私は本作で初めて知ったのですが、その埋められた犠牲者を庇護する法律「歴史記憶法」が2007年に成立したとのこと。この「犠牲者の権利」を犠牲者が得るには、DNA検査が極めて重要になります。DNA検査は、この犠牲者の権利を示唆していたのですね。

歴史は忘れない。
全てが繋がっている。

犠牲者の権利の運動は、スペインだけではなく、アルゼンチン、コロンビア、メキシコでも広がっています。人間の尊厳の問題だからだと思います。

私はいつも映画や本などに触れると、私が生まれる遥かずっと前の先人達の思想の積み重なりを感じます。人類のみに与えられた特権は、文化の継承。

本作のパンフレットのインタビューで、アルモドバルは脚本の執筆期間を妊娠期間に例えていましたが、彼もまた、クリエイティブを介して未来に種を蒔く母と言えますよね。そして、沢山の先人達に影響を受けて作品を生み出している人類の歴史の中のひとりであり、連続性のひとつであるとも言えます。このことは、つまり私もあなたもアルモドバルも同じで、全人類に言えることだと思います。

スペインの民主化によってアルモドバルの才能は開花しました。仮に民主化が無ければ、アルモドバルは誕生していません。民主化に至るまでには、沢山の人達の闘いの歴史と犠牲がありました。この歴史があるからこそ、今は自由に映画を撮れますし、自由に鑑賞ができるのです。彼らの命を懸けた闘いに畏敬の念を表した作品だとも思います。

今まで父権的なものを拒絶し否定してきたアルモドバル。しかし、本作では男性を拒絶している様には見えませんでした。こういったアルモドバルの姿は、彼が歳を重ねてマイルドになったというよりも、父権的な社会が徐々にそうではない方向に変化してきている証明なのかもしれません。あとは、性別という概念がもう古いんでしょうね。

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ミカ

4.0敵と味方を超えた大きなひとつの流れへ

2022年11月14日
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2021年。ペドロ・アルモドバル監督。同じ日に女の子を生んだ二人のシングルマザー。ところが、年上のカメラマンの女性の方は交際相手(実は不倫)に指摘されたことから子どもの肌色に違和感を持ち始め、DNA鑑定をすることに。100%血縁はないという結果に、産院での取り換えを疑うが、言い出せずにいるうちに、もう一人の若い母親と再会。なんとそちらの娘(実は自分の娘)は死亡していたことが判明する。その母親と同性愛的な関係にもなって苦悩する主人公。しかし、ついにすべてを告白する日がやってきて、という話。
子どもの取り違えと一方の子の死となれば、敵対しそうな二人の女性だが、同性愛にまでいたる親密な感情を育てていくというのがポイント。異性愛も同性愛も関係なく、人間の親密な感情が積み重なっていく。ここでのキーワードは嘘をつかないこと。たとえつらいことでもごまかしてはいけない。ごまかさずに対面して話をすれば誰もが仲間になっていく。
作品のもうひとつのより大きな枠組みは、主人公のカメラマンが取り組んでいる祖先の記憶回復運動。スペイン内戦で虐殺され、埋葬もされなかった曾祖父らの遺骨の掘り返しと記憶の継承を進めている。ここでも遺骨の確定にDNA鑑定が用いられるのだが、確定された遺骨たちは敵と味方に分かれて殺し合ったスペインという国の過去を「ごまかすことなく」語り直すことを可能にしていく。

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文字読み

3.0スパニッシュオムレツ

2022年11月14日
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ポテトオムレツ??って一瞬思ったのだけれども、そりゃそうよね。スペイン人が自分とこのオムレツを「スペイン風オムレツ」とは言わんやろ。「お好み焼き」問題とおんなじやね笑。そして思いの外日本車が愛されている。タクシーを除けば、登場するのはSUZUKIさんだから、監督がジムニー好きなのかな。嬉しい事でございます。
観終わった後もボンヤリとタイトルの事を考えていたりしたのだけれども、わかったようなわからんような。少なくとも二人だけを指して言っているのではないとは感じましたが、「スペイン内戦」に纏わるアレコレをそれなりに知っていないと誤解してしまいそうだなー、なんて思いました。
スペインやイタリア辺りは「母は強し」な印象があるので、女性が「母」へと変容していく苦悩や力強さも生々しく描かれていたので、そういう側面でも興味深かったと思いました。

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lynx09b

4.0冒頭から引き込まれる引き締まった佳作

2022年11月13日
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知的

アルモドバル監督の最新作にして、ペネロペ・クルス主演作。子の取り替えに起因するてんまつを描くが、そこは流石にスペイン人。ただでは転ばすに緩い家族として再生する。

物語の横糸を紡ぐのはフランコ政権下の市民虐殺の事実。ラストシーンの映画的な策略に息が止まる。おススメです。

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po.bacardi

3.5ペネロペ・クルスが美し過ぎ

2022年11月13日
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最近、女優さんが美しい映画が多い・・・・
以前と比べて、少しお年をめされた方が美しい
子供に対する愛の大きさをはかる映画だが・・・・
夫婦と言う点では、無茶苦茶な感じだ
スペインはそうな感じなのかな?
映画としては内戦の話は置いといて、二人の関係に集中してほしかった

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シネパラ

3.0シングンマザー、子供の取り違え、スペイン内線…少し焦点がぼやけた感があるが、色彩はあざやかで美しい。

2022年11月13日
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前半と後半の映画のコンセプトが異なっている。
前半は2人のシングンマザーの子供が取り違えられたことによる様々なドラマを描き、後半はスペイン内線の話だと思うが、歴史問題へと踏み込んでいく。
全編を通じて言えるのは、ペドロ・アルモドバル監督の特徴とも言える鮮やかな色彩感覚が独特の映像美を創り出している。
ただ、埋められた遺骨を掘り起こす後半のストーリーは、別の映画で表現した方が良かったのではないだろうか。
ラストシーンは別の映画のように思えた。
子供の取り違えによる二人の女性の葛藤を描き、90分の映画であれば、ペネロペ・クルスの演技も含め、おもしろい作品だったように思える。

#184

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caduceus

3.0歴史を覆い隠すことは出来ない。

2022年11月12日
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笑える

知的

かつての内戦により多くのスペイン人が虐殺された。本作は二人の世代が異なる女性の出生児取り違えの物語を通して、科学技術の進歩により確立したDNA鑑定が過去の歴史的暗部を暴いてゆく様を描く。

スペイン人監督が言いたかったことを主人公ジャニスに代弁させているのだろう。彼女は親子ほど年の離れたアナに言う。過去に自国で起きた悲劇を知るべきであり、自身のルーツは自身の先祖が眠るこの地にこそ見出すことができるのだと。内戦の過去など知ろうともしない今の若い世代への嘆きなのだろう。これはどこの国でも考えられること。歴史を学ばないどころか歴史を修正捏造する国まであるくらいだから。

赤ちゃんの取り違えによる物語は正直ジャニスの行動が理解できずにあまり入り込めなかった。鑑定で実の子ではないと知ったとき、アナの子と取り違えられたと気づきながら、何故電話番号を変えてまで雲隠れしようとしたのか。何年も育ててきて愛着があるというならまだしも、出産間もない時期だし、何よりも本当の自分の子のことが気になるはずだ。
にもかかわらず、アナやアルトゥーロに再会したときはあっさり新しい番号を教えたり、実子の死を聞かされた時もさほどショックを受けなかったりと、私にはこの物語が一体どこを目指してるのかが理解できなかった。
終盤発掘される先祖の遺体がDNA鑑定でジャニスの先祖ではないと判明して、今まで信じていた自身のルーツが覆されるという、ジャニスのとった行動への皮肉を込めた落ちなのかなと思ったが、そうではなかった。

スペインの名匠アルモドバル作品は初体験だったが、いまいち私には本作に込められた作品意図がわからなかった。
ちなみにペネロペクルスは久しぶりに見てもその相変わらずの美しさに驚いた。

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レント