劇場公開日 2021年11月12日

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「日々進化を続ける米国のドーナツ業界に君臨したキングの壮絶な栄枯盛衰を見つめる分厚いドキュメンタリー」ドーナツキング よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0日々進化を続ける米国のドーナツ業界に君臨したキングの壮絶な栄枯盛衰を見つめる分厚いドキュメンタリー

2021年11月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

米国民の96%に愛されるスイーツ、ドーナツ。1975年のプノンペン陥落により祖国を追われたカンボジア難民の1人だったテッド・ノイはガソリンスタンドで働いている時にドーナツショップの甘い香りに魅了されてドーナツ店での修行を開始、昼夜問わず働いて貯めた資金で小さなドーナツショップを開く。従業員を雇わず家族総出で徹底的にコストを切り詰めた経営で商売を軌道に乗せていくだけでなく、同じように祖国を追われたカンボジア人の身元引受人となって次から次へと米国に呼び寄せてはドーナツショップ経営のノウハウを教えてカリフォルニアにどんどんドーナツ店を開業させて賃料収入で瞬く間に億万長者となり、ドーナツキングと呼ばれる存在になる。

映画はそんなテッドさんが成し遂げたアメリカンドリームや奥さんのクリスティさんとのドラマティックな馴れ初め、ドーナツ店主達が語るプノンペン陥落後の過酷な生活といった様々なエピソードを紹介。しかし映画はドーナツキングの栄光に忍び寄る闇にも肉薄、そこから先の展開に思わず息を呑み豪快に泣かされました。かつてさまざまな土地で出会った移民の方々と話した際にも波瀾万丈な人生を和かに語る逞しさに驚かされましたが、本作に登場する人達が時折言葉を詰まらせながら語る半生にも想像を絶する歴史が滲んでいて、スクリーンを彩るカラフルなドーナツのように眩しく見えました。

よね