劇場公開日 2022年11月25日

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「昔よく読んだ中世の騎士の勇気試し兼怪物退治ものが懐かしく思い出される。道中の様々な映像が喚起するものが主人公の心象風景であるのが大人のファンタジーたる所以かな。でもちゃんと教訓話・寓話にもなっている。」グリーン・ナイト もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0昔よく読んだ中世の騎士の勇気試し兼怪物退治ものが懐かしく思い出される。道中の様々な映像が喚起するものが主人公の心象風景であるのが大人のファンタジーたる所以かな。でもちゃんと教訓話・寓話にもなっている。

2022年11月27日
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鑑賞方法:映画館

①“アーサー王と円卓の騎士”のサイドストーリーとして創作した話かな、と思っていたら原作有りきだったとは。
②インド系丸わかりのお兄ちゃんがアーサー王の甥で、如何にも中東系のおばちゃんがアーサー王の妹なのがどうもしっくり来ない点はあるが、映画自体は最後まで飽きずに面白い。
③“「緑の騎士」はあなたの良く知っている人”という台詞があったのに最後まで正体がわからなかったし、サー・ガーウィンの母親の魔術が「緑の騎士」を呼んだらしいが母親と「緑の騎士」との関係が良くわからなかったりと、煙に巻かれるところもあるが、中世のイギリスを舞台にサー・ガーウィンの道中の風景や出来事を圧倒的な映像美で描いているのが映画として大変魅力的。
終り方も大変良い。
尚、上記の疑問の答えは原作を読んでいれば分かるようだ(Wikipediaによると)。
④アリシア・ビカンダーはどんな役でも魅力的。
⑤キツネちゃんが可愛い。
⑥“人間、やっぱり約束は守らなくちゃ”という寓話ですね。ちょっと『走れメロス』みたい。
⑦この後はWikipediaでアーサー王伝説とそれに付随したものを読んだ後の感想。
アーサー王伝説は映画でも既に何度も映画化されていて、それぞれ解釈が違うが、元々アーサー王伝説は色んなバージョンがあって、本作の主人公のサー・ガーウィンの人間像も色んなバージョンがあるみたい。
騎士道の見本みたいな立派な面(原作はそうみたい)ではなく、弱い面を全面に出して描いているのが現代風のアレンジか。その他原作を改作している部分も結構有るよう。
領主が代償として欲しかったのはサー・ガーウィンの接吻だったというのは原作にある通りだが、この映画版の方はどことなくホモセクシャルな匂いがある(尚、ジョエル・エガートンは2004年製作の『キング・アーサー』ではサー・エガートン役らしい)。
⑧大概のアーサー王映画では美人女優が演じている王妃グィネヴィアを怖い顔のオバサンが演じているのも面白い。焼かれた筈の手紙がまた現れたのが、そしてその手紙を読むグィネヴィアが何者かに憑依されたようになるのも原作やアーサー王伝説を知っていると分かるよう。
⑨ただ、私もそうだったように、上記のことを知らなくても十分楽しめる大人のファンタジーとして良く出来た映画。

=追記=
アーサー王伝説は、キリスト教流布前の西ヨーロッパの文化だったケルト文化の影響を色濃く残しているという。そういえばサー・エガートンの母の使う魔術、森の民だったケルト人達を偲ばせる森林の描写が多いこと、“緑”の騎士、映画の中での領主夫人(アリシア・ビカンダーの一人二役)が述べる“緑”という色の解釈。最近ケルト文化に興味がある私としては一つの入り口となるかもしれない。

もーさん