劇場公開日 2021年9月24日

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「キノコと菌のポテンシャルはまさにファンタスティック。タイムラプス映像も刺激的」素晴らしき、きのこの世界 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5キノコと菌のポテンシャルはまさにファンタスティック。タイムラプス映像も刺激的

2021年9月26日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

知的

萌える

キノコや菌類について、私を含め通り一遍の知識しかない観客にとっては相当に興味深いドキュメンタリーだ(ちなみにキノコも菌類に属する)。監督のルイ・シュワルツバーグはタイムラプス映像のパイオニアと呼ばれているそうで、色鮮やかなキノコたちがものすごい速さでニョキニョキと伸びるさまには単純に魅了される。

人間側の主役である菌類学者ポール・スタメッツの破天荒な人生もすごい。マジックマッシュルームを食べて変性意識を体験したことで吃音が治り、“きのこビジネス”で起業して大成功。単に食用として売るだけでなく、さまざまな菌を研究して、シロアリにつく菌を利用して巣ごと駆除する方法や、植物の受粉に欠かせないが感染病で大量死していた蜂の免疫力を高める方法を開発したり。さらには重度の乳がんを患い高齢のため手術もできないという母に、カワラタケを原料にした抗がん剤を服用させて(化学療法との併用で)治してしまう。

中盤以降は、マジックマッシュルームなど一部のキノコに含まれる成分の幻覚作用や向精神作用についての話、さらにはスピリチュアル系の話が増えてきて、よくある科学的ないし学術的なドキュメンタリーかと思って観始めるとびっくりするかもしれない。ただし米国では一時期禁止されていた向精神薬に応用する研究が再開され、鬱病患者や終末期患者への投薬が行われているというし、将来的には日本でも認可される可能性もありそうだ。

ちなみに原題は「Fantastic Fungi」。fungiは菌を意味し、fantasticは「素晴らしい」のほかに、「幻想的な、空想的な」という意味もある。多少怪しげな話も含め、魅惑的な世界を垣間見ることができる一本だ。

高森 郁哉