「奇しくも宗教2世問題が描かれている」劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM 後編 僕は君を愛してる 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5奇しくも宗教2世問題が描かれている

2022年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

一本の映画作品としては、ちょっと長くて情報量を詰めすぎているかなとも思うのだけど、これだけ膨大な情報があってもなお底の見えない作品でもあって、幾原監督の作った世界のユニークさの現れともいえる。奇しくも、この後編では今話題となっている「宗教2世」問題が描かれる。直接のモチーフは、1995年地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教だが、カルト宗教の一味としてテロに参加した両親の子供たちが、その呪縛にからめとられる運命といかに向き合うかを描いている点は、今社会で取りざたされている事件とも通じる。
前編のややノーテンキな雰囲気とは一変していて、映画用に再編集してシリアスな展開を煮詰めているので、ペンギンたちの存在感が浮いてしまうのがちょっと残念なのだけど、何者にもなれない若者たちの運命に抗う物語は、テレビ放送された10年前以上に今切実な響きがあった。

杉本穂高