劇場公開日 2022年3月4日

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「音で見る映画、アピチャッポンがなせる神の所業」MEMORIA メモリア ムービードープさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5音で見る映画、アピチャッポンがなせる神の所業

2022年3月13日
iPhoneアプリから投稿

“僕はハードディスクで君はアンテナ”

ティルダ演じるジェシカは突然、地球の核から鳴り響く轟音を受信し、その真相を求め旅立つ。

アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の作品は、以前オールナイト上映で鑑賞した。その中でも『ブンミおじさんの森』がとても好きだった。しかし、今回『メモリア』を鑑賞して、ブンミと同等くらいに好きな作品になった。そして、アピチャッポン監督作品は筆舌し難いけど、凄まじい力を持っていると改めて感じた。

本作は、“悠久の時の流れ、石や木やコンクリートに吸収された記憶… すなわち土地や自然、物質、そして人間の身体に宿る記憶を巡る物語” であると考えられる。連綿と続く歴史の起源を音で辿る表現が非常に面白くて、それはアピチャッポンが成せる神の所業であると感じた。
また、全編に散りばめられたエピソードはどれも遠いような気がするのだけど、すべてが密接につながっていて、ハッとするような瞬間が幾度となくあった。1回の鑑賞では拾いきれてない部分が多々あると思う。記憶は個人の脳内だけに内在されるのではなく、他者と共有できるもの… “僕がハードディスクで、君はアンテナ”というセリフが象徴的で、ティルダ演じるジェシカが他者の記憶につながるアンテナのごとき役割を持っていて、他者に触れると相手の記憶が自分自身のもののように蘇ってくる… なんという深淵なテーマ。めちゃくちゃすごい。

ムービードープ