成れの果てのレビュー・感想・評価
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久々に酷い作品を見た
「レイプ加害者を被害者の姉と結婚させたろ!」ってアイデアだけで走らせた、あまりにも酷い作品だった。
登場人物、特に主要3キャラの行動はあまりに意味不明で、その行動をとった背景が何も理解できない。
脚本に書かれてるからこうしました、この映画のためにこういう行動取りました、みたいな、その行動の全てが作品のために無理やり動かされた行動であり、ヒューマンドラマなのに納得できる心情の動きや揺らぎが何も感じられない、アイデアありきでアイデアを体現するためにご都合主義の行動を取るだけの酷い作品だった。
デリカシーとリアリズムに欠ける作品
推し女優・萩原みのり主演とのことで、好みでないとわかっていながら鑑賞。案の定肌に合いませんでした。露悪を楽しむ負のファンタジーエンタメとでも言えそうですが、個人的には苦手です。一応テーマは西川美和の『ゆれる』と同様、きょうだい葛藤がベースになっている話ではあります。
妹に性暴力を振るった男と、姉が事実を把握した上で結婚して、それを知った妹が田舎に戻ってくるというストーリーです。いろいろと無茶な設定とディテールの雑さ、デリカシーの問題が印象に残り、みのりのド迫力ぶり以外はあまり良さを感じられず、どちらかというとドン引きする場面が多かったです。
姉が妹に対して強い羨望と憎しみを感じているのは序盤でわかりましたが、姉と結婚する男の心情が謎すぎる。とりあえず登場人物は皆自分のことしか考えていないのですが、この男は特によくわからなかったです。レイプしといて「俺も辛いんだ」という発言はさすがにどうかと思いました。もう少し実際の被害者への想像力を持った方が良いと感じました。
あと、知人の性暴力被害をネタにして学校で居場所を作れたり、営業トークで上手くいったりしますかねぇ?みんな引くんじゃない?男の知人カップルとかもむちゃくちゃで、こういう過剰演出が好きじゃないんだな〜と実感しました。閉塞した田舎だから、みたいなエクスキューズがあったとしても、さすがにそこまで倫理観ないのはファンタジーが過ぎるなぁとの印象です。
全体としてやたらめったらと悪を感情的に増幅させている印象を受けて、悪趣味エンタメの域を超えていないように感じました。
嫌悪感しか無い登場人物
妹をレイプした男とどうあっても結婚なんてならないよ。この時点で姉メンヘラ確定。と思ったら…周りもヤバイ。金欲しさに友人宅の登記簿謄本持ち出すわ、レイプの話で周囲で盛り上がるっていくら田舎で暇だからと言っても人格疑う。なんだこりゃ?誰一人共感出来ない、嫌悪感しか無いわ。でも、ラストまで見ていると結局これって姉妹の確執に周りが巻き込まれてるだけなんじゃ…?
追記:輪姦は”わかん”じゃ無くて”りんかん”ね。
刺さった。
登場する人間たちが全員「生きて」いた。
脚本の巧妙さや演出・カメラワークのこだわりも随所から感じるが、個人的に特に称賛したいのはキャスティングの素晴らしさ。
なかなか幸せになれる役の少ない萩原みのりがこういった役を演じるのは上手だということは想像に容易いが、その期待をも斜め上に超えていくほど小夜からは凄みを感じた。
彼女の放つオーラ、金髪から想像される背景、様々な色を持つ眼差し、どの場面でも美しいのだが、美しすぎないように撮られているのにも好感を持った。
そして柊瑠美の文字通り「体当たり」で演じたあすみもその存在から滲み出る説得力に痺れる。
なんとも言えない幸の薄さから、ラストに向けての彼女の変化も見所のひとつ。
どうしても克服できない根深いコンプレックスを抱えている姉、振り回される人間という意味ではもう一人の主人公だと感じる。
三番手以降の出演者も秀逸。
木口健太のこれまた絶妙なクズさ・真摯さが布施野という人物の背景を妙にリアルに想像させる。
狂気じみた行動もその苦悩を感じられて、見ていて興奮した。
後藤剛範はこの作品で非常に重要なポジション。
息の詰まるシーンが続く中、エイゴの出てくる場面はほっこり箸休めになったり、クライマックスを担ったり、今作のテーマともなるような台詞を言ったりもする。
チャーミングな表情も恐怖でしかない行動も、上手すぎる。
秋山ゆずきもピンポイントで大事な役割を果たした。
なんとも耳障りな声に話し方(とても褒めている)、出演シーンは少ないが強烈な印象を残す。
田口智也も、体型とキャラクターの印象が強いが、人との関係性を表す繊細な表現が上手い。
存在自体の愛らしさがスクリーンから伝わってくる。
梅舟惟永はなかなかいない雰囲気の漂う俳優。
冷静に考えれば姑息でなかなか厄介な友人だが、独特のテンポでポップに存在していた。
花戸祐介も非常に上手いし遊び心のある俳優だと感じた。
こういう先輩いる、というか、いたら嫌だけど、自分に正直なキャラクターを巧妙なバランスで描いていた。
個人的に花戸祐介からは目が話せなかった!
人によって、あるいはその日のコンディションによってもどう感じるか変わりそうな作品。
どの登場人物の視点から見るかによっても印象が違いそう。
深く刺さる人もいれば酷い嫌悪感を抱く人もいると思うが、この作品を観て特に何も感じない人とは趣味が合わなそう。
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